研究概要 |
平成24年度の研究実績として、ラットの上顎第一と第二臼歯の実験的矯正移動を行ない、歯の移動開始後1,3,5,7,14,28日目にラットの灌流固定を行なった。上顎を取り出し後固定を行い、EDTAにて脱灰したのち凍結させ、中脳路核や三叉神経節も凍結させ 、ミクロトームにて20μmの連続凍結切片を作成した。作成した切片の免疫染色ならびに蛍光免疫染色を行ない、 反応部位におけるマイクログリア、アストロサイト及びそれぞれの神経ペプチドやc-fos蛋白の局在を落射蛍光顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡から得られる蛍光像から断層像を再構築し、三次元距離計測ソフトおよび体積 ・表面積測定ソフトを用い、神経組織の三次元構築を行い、定量化した。 その結果、実験的歯の移動後3,5,7,14日では、尾側亜核の実験側においてマイクログリアならびにアストロサイトの集積や突起の伸展が認められた。吻側亜核においては、マイクログリアは3,5,7,14日後に、アストロサイトは7,14日後に実験側において増加ならびに伸展がみられた。また、実験的歯の移動後3、5、7日に歯の移動側ではc-Fos陽性の神経線維周囲にマイクログリア、アストロサイトの集積が認められた。14日後においては、マイクログリアならびにアストロサイトの集積は認められなかった。 これらの結果は、グリア細胞が痛みの発達、維持に関与していることを示唆している。末梢神経の侵害受容により、中枢では神経の活性化が起こり、神経伝達物質を放出し、周囲のマイクログリアの活性化を引き起こす。この早期のマイクログリアの活性化は、アストロサイトの活性化を導き、痛みを維持させると考えられる。
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