研究課題/領域番号 |
24593078
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸谷 由里子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60400389)
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研究分担者 |
岩本 勉 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90346916)
中村 卓史 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (90585324)
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キーワード | 歯の再生 |
研究概要 |
Growth/differentiation factor-5(GDF-5)はTGF-βスーパーファミリーに属し、軟骨・骨形成を促進することが知られている。また 、口腔領域にも発現し、歯胚の形成に関与すると考えられている。しかし、歯の発生に関するGDF-5の研究はあまりなく、GDF-5の歯髄 細胞に対する作用は明らかにされていない。 我々は、幼若歯髄細胞にGDF-5加えると象牙芽細胞分化マーカーの発現が上昇することを示したが、歯髄細胞に含まれる多分化能を有した幹細胞は、1%以下であるため、象牙芽細胞分化誘導を生化学的に評価するには不十分だった。そこで、本研究課題においては株化に成功したマウス歯髄由来幹細胞を用いることにより、歯髄幹細胞に対するGDF-5の影響を、象牙芽細胞への分化能に着目して検討した。 歯髄幹細胞にGDF-5を添加し、培養した群のDSPPの遺伝子発現は、GDF-5非添加群に比較し有意な上昇が認められた。また、BSPの遺伝子発現は培養48時間後においてGDF-5添加群で上昇し、ALPでは、培養24時間後、48時間後いずれにおいてもGDF-5添加による遺伝子発現の有意な変化は見られなかった。GDF-5は、象牙芽細胞マーカーであるDSPP遺伝子の著しい発現上昇を誘導したことから、本分子は歯髄幹細胞を象牙芽細胞へ直接分化促進する作用を持つことが明らかとなった。BSPおよびALPは石灰化に関する遺伝子であることから、さらに分化が進んだ段階で遺伝子発現に差が現れるものと考えられた。多くのTGF-βファミリー分子は、骨基質やALPの発現を早期に調節するものが多く、DSPPのみを発現誘導するものはほとんどない。このことから、幹細胞を骨芽細胞でなく象牙芽細胞に分化誘導させる為にGDF-5は重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題において、GDF-5による歯髄幹細胞株の分化誘導能を検討する目的で、歯髄幹細胞株(SP細胞)に、外来性にGDF-5を添加し、象牙芽細胞分化に関してはDSPP遺伝子、血管内皮細胞に関してはCD31等の遺伝子発現解析をRT-PCR法を用いて解析し、また、SP細胞の血管誘導能に関しては、VEGFやPDGFの発現について検討を行う計画であった。しかし、GDF-5添加による種々の遺伝子発現解析において安定した結果が得られず、研究計画が当初の予定通りに進行していない。
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今後の研究の推進方策 |
1)GDF-5による歯髄幹細胞株の分化誘導の検討 安定した結果が得られない原因として、現在使用している細胞の、GDF-5に対する反応の弱さが考えられる。そこで、GDF-5のレセプターを過剰発現させた歯髄細胞を作製し、以下の実験を行っていく方策である。歯髄幹細胞株(SP細胞)に、外来性にGDF-5を添加し、象牙芽細胞分化に関しては、DSPP遺伝子、血管内皮細胞に関してはCD31等の遺伝子発現解析をRT-PCR法を用いて解析する。SP細胞の血管誘導能に関しては、VEGFやPDGFの発現について検討を行う。また、象牙芽細胞の分化に関しては、Von Kossa染色による石灰化能についても検討する。 2)GDF-5による人工歯髄幹細胞の分化誘導の検討 本研究室では、新規の薬剤コンパウンドにより、分化した歯髄細胞から、歯髄幹細胞を人為的に誘導することに成功した(世界初)。 そこで、この手法により人工歯髄幹細胞にGDF-5を添加し、上記の1)と同様の分化誘導の検討を行なう。さらに1)、2)の実験で得られた分化誘導過程におけるmRNAサンプルを利用し、アフィメトリックス社のcDNAマイクロアレーを用いて、象牙芽細胞、血管内皮細胞の分化過程における遺伝子発現変化につき包括的なスクリーニングを行なうとともに、シグナル伝達予測システムをもちい、GDF-5が分化誘導に関わる、シグナル経路をバイオインフォマチックな手法にて同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画実施の遅延のため 次年度使用額は、当初計画していた研究計画の実施、学会発表を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した研究計画の実施、学会発表に必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。
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