研究課題/領域番号 |
24593082
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
島崎 一夫 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (10420259)
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研究分担者 |
小野 卓史 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30221857)
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キーワード | 外科的矯正治療 / 上顎移動術 / 上下顎移動術 / 呼吸機能 |
研究概要 |
骨格性の顎顔面形態異常を有する不正咬合患者に対しては、外科的矯正治療が施行されることが多い。近年、外科的矯正治療後の随伴症状としての睡眠呼吸障害が大きな論点となっている。そこで、『外科的矯正治療が咬合や顔貌の改善のみならず、呼吸機能の改善にもつながる理想的な治療計画を考案する』ことを研究の全体構想として掲げ、なかでも上部気道の一部である鼻腔底を構成する上顎骨に着目し、『外科的矯正治療における上顎移動術に起因する呼吸・睡眠機能の変調』について明らかにすることを本研究の具体的目的とした。 平成24年度は、主に生理的条件下における呼気シミュレーションの準備を行った。治療前後にCTを撮影し、得られたDICOM データから3次元モデルを構築した。しかし、実際に流体計算を行うには適切な計算格子(メッシュ)を切る必要があり、この作業に膨大な時間を要した。また、吸気の際、生理学的に左右の鼻腔に流れる流量は違うが、現在一般にシミュレーションが行われている鼻腔モデルではそれが考慮されていない。その為、エネルギー損失(圧力損失=ΔP)を過大に算出してしまう状態にある。それを解決するためのドライバー付与モデルの考案・作成にも時間を要した。 平成25年度にはメッシュの条件をクリアし、6症例(12モデル)について適切な計算を行うことが出来た。その結果、鼻腔および咽頭におけるΔPは、術前後において有意差を認めないことが分かった。鼻腔の部位によるΔPの違いを調べる為に鼻腔を前方・中央・後方部に3分割し、鼻腔全体のΔPに対するそれぞれの部位のΔPの割合を算出したところ、多くの症例において前方部のΔPが最大となった。実際の臨床と照らし合わせた場合、この部位は上顎骨上方移動に伴い、梨状口下縁が上方に移動することで狭窄するため、鼻腔通気の観点から手術に際して梨状口下縁を可及的に切削する必要がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、3次元モデルに適切なメッシュを切る作業に膨大な時間を要した。また、ドライバー付与モデルの考案・作成にも時間を要した。 しかし、平成25年度にはドライバー付与モデルの作成方法およびメッシュ付与の詳細な条件が確立したため、計算結果の解析に時間を使うことが可能となった。 その為、研究スピードが飛躍的に向上したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在計算も問題なく行える状況があり、ある程度の結果も出てきてはいるが、解析結果の標準化という面を考えるといまだ不十分であると言わざるを得ない。 その為に今後は部位によるΔPを長さ・断面積・表面積などの指標で標準化するとともに、モデル数を増やすことによって標準化を進めていくことを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では様々なソフトウェアを購入することが必要不可欠であり、年間ライセンスではなく購入した場合においても保守費用が毎年発生する。 また、新たなモジュールを追加することで作業効率が大幅に改善することが多いため、必要に応じて再契約が必要になることがある。 それらの保険として今現在確実に必要とまでは言えない部分に関して支出を控えたために次年度使用額が生じた。 学会発表、論文投稿にかかる経費に使用することは勿論であるが、作業効率の更なる改善のためにソフトウェアのモジュール追加を現在考えている。 具体的にはマテリアライズ社の3-maticにモジュールを追加することを考えている。
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