研究課題
骨格性の顎顔面形態異常を有する不正咬合患者に対しては、外科的矯正治療が施行されることが多い。近年、外科的矯正治療後の随伴症状としての睡眠呼吸障害が大きな論点となっている。そこで、『外科的矯正治療が咬合や顔貌の改善のみならず、呼吸機能の改善にもつながる理想的な治療計画を考案する』ことを研究の全体構想として掲げ、なかでも上部気道の一部である鼻腔底を構成する上顎骨に着目し、『外科的矯正治療における上顎骨移動術に起因する呼吸・睡眠機能の変調』について明らかにすることを本研究の具体的目的とした。平成24年度は生理的条件下における呼気シミュレーションの準備を行った。治療前後にCTから得られたDICOMデータを用いて3次元モデルを構築し、適切な計算格子(メッシュ)を模索し付与した。現在鼻腔で一般的に行われているシミュレーションでは、左右の鼻腔に流れる流量の違いを考慮していないため、その対処法としてドライバー付与鼻腔モデルを考案・作製した。平成25年度は6症例(12モデル)で実際に計算・解析を行った。鼻腔の部位によるエネルギー損失(圧力損失=ΔP)の違いを調べるため鼻腔を前方・中央・後方部に3分割し比較を行ったところ、多くの症例で前方部のΔPが最大となった。このことから手術に際しては、鼻腔前方部への配慮を行うことが呼吸機能の観点から重要であることが示唆された。平成26年度は合計10症例(20モデル)で計算を行い、手術後に手術前と比較してΔPが低下するという結果を得た。つまり、手術後に呼吸機能が改善するという結果を得た。今回のモデルでは手術中に梨状孔下縁を切削し、鼻腔前方部の容積を増加させている。その手技が今回の結果に繋がったと考えられ、上顎骨移動術に際して梨状孔下縁を切削するというオプションを追加することが、呼吸・睡眠機能の点において有用である可能性が示唆された。
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