研究課題/領域番号 |
24593087
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
河野 承子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10397127)
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研究分担者 |
三富 智恵 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00313528)
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
河野 芳朗 新潟大学, 医歯学系, 助教 (60303129)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯根膜 / 臨床モデル / 矯正移動 / 咬合性外傷 / 廃用性萎縮 |
研究実績の概要 |
歯は、歯根セメント質と歯槽骨が歯根膜によって柔軟かつ強靱に結ばれることによって機能を発揮する。この複合組織が構成される発生メカニズムと、障害後の機能的な歯牙-歯根膜-歯槽骨複合体の再生については不明な点が多い。我々は免疫組織化学を用いた解析により、セメント質への歯根膜線維の埋入、および固有歯槽骨へのシャーピー線維の埋入にアクアポリン(AQP)陽性細胞が直接関与することを明らかにし、AQP陽性細胞が歯牙-歯周靭帯-固有歯槽骨複合体を形成するのに重要な役割を果たしていることを明らかにしつつある。 臨床的な視点から、様々な病的状態における歯根膜でのAQP陽性細胞の動態を明らかにするため、臨床実験モデルを確立し形態学的に解析した。咬合性外傷モデルからは咬合性外傷後3日後にアクアポリン陽性細胞が歯根膜全体に現れ、硝子様変性の後、アクアポリン陽性細胞による変性部の被包化が起こり、14日後には歯周組織の再生は完了していた。また、電子顕微鏡を用いた微細形態学的な解析では、外傷後の歯根膜線維芽細胞の偽足先端部にAQPの発現が観察された。これらの結果はAQPは歯根膜細胞の変形・移動に関与しておることが示唆された。対合歯を抜去した歯根膜廃用萎縮モデルでは、抜歯後、3週まで挺出が持続し、歯牙の挺出と共に歯根膜幅、歯槽骨表層AQP陽性細胞数も減少した。また、挺出と共に歯根セメント質表層のAQP の発現にも変化が見られた。これらの結果は、歯の挺出に伴い機械的ストレスの減少が予測されることから、AQPは歯根膜の機械的ストレスの変化に伴って発現が変化した可能性が示唆された。これらの形態学的データの客観的な解析のために、歯根膜特有のパラメーターを設定し、評価する方法を確立し、客観的、数値的、統計学的解析を試みようとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床実験モデルの客観的、数値的評価のために独自に歯根膜形態計測プログラムを作製した。これにより、細胞数、歯根膜幅、歯牙挺出量の客観的評価が可能となった。歯根膜廃用性萎縮モデルでは、歯牙の挺出、歯根膜厚の菲薄化が統計学的に明らかとなり、歯槽骨表層細胞でのアクアポリンの発現は廃用性萎縮に伴い低下していることが明らかになった。また、骨芽細胞数、および破骨細胞数にも著明な変化が見られることが明らかになった。今後は、独自に作製したAQP遺伝子欠損マウスを用いた臨床実験モデルにおける野生型との違いを解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの臨床実験モデルにおける基礎データを基に、歯根膜解析用プログラムを作成し、客観的、数値的、統計学的解析を行う。また、AQP遺伝子欠損マウスを用いた実験モデルにおける遺伝子介入実験を予定している。これまでの臨床実験モデルにおける歯根膜表細胞におけるAQPの役割を野生型と遺伝子欠損モデルを比較することによって解析する。AQP遺伝子欠損マウスは正常状態では表現型に大きな異常は報告されていないが、がん細胞を移植すると血管内皮細胞の運動性が低下することが報告されている。歯根膜でのAQPの欠損により、歯根膜咬合紙外傷の治癒の遅延、歯の移動の異常、歯の挺出の遅滞が予測される。これらの組織学的解析により、歯根膜における様々な実験条件下での組織変化とアクアポリン陽性細胞の動態を解析することにより、歯根膜細胞におけるAQPの役割を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
産前産後育児休暇取得し、1年間の研究中期間があったため、研究中断期間の使用予定額がほぼ持越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床実験モデルを用いた組織学的基礎データを基に、歯根膜解析用プログラムを用いた形態計測による統計学的データの収集・解析を行う。また、研究成果については、基礎歯科医学会(新潟)での発表を予定しており、研究費の一部は旅費として使用する。また、英文雑誌への投稿も予定しており、投稿に関わる英文校正、投稿料、印刷費等も予定される。
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