研究課題/領域番号 |
24593091
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
川邉 紀章 岡山大学, 大学病院, 講師 (00397879)
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研究分担者 |
菅原 康代 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70379775)
柳田 剛志 岡山大学, 大学病院, 助教 (90534793)
住吉 久美 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80625161)
山城 隆 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70294428)
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キーワード | ロンベルグ症候群 / 歯根膜細胞 / 人工多能性幹細胞(iPS細胞) |
研究概要 |
平成26年度に実施した研究成果として、ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現する遺伝子の同定を行った。平成25年度の研究においてフローサイトメトリーによるロンベルグ症候群歯根膜細胞の表面抗原マーカーの発現の違いを調べたが、その結果として、ロンベルグ症候群歯根膜細胞は正常歯根膜細胞と比較してICAM-1、NCAM-1、SSEA-4の発現が高く、ICAM-2の発現は低かった。しかし、これら表面抗原の発現は細胞膜に存在する物質に限定されるため、ロンベルグ症候群歯根膜細胞の生物学的現象を説明するには不十分であると考えられた。そのため、ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現している遺伝子を網羅的に解析するために、mRNAを回収しマイクロアレイにて解析を行った。方法としては、フローサイトメトリーを行った時と同じく、培養ロンベルグ症候群歯根膜細胞と対照群として健常ヒト歯根膜細胞を用い、それぞれのmRNAを回収して解析を行った。その結果、ロンベルグ症候群歯根膜細胞で発現している遺伝子群の上流にPOU3F2、PSCD1、TNFSF8、SPASTが存在していることが明らかとなった。また、これらの研究に加えて、ロンベルグ症候群歯根膜細胞を用いたiPS細胞の作成も行った。フローサイトメトリーおよびマイクロアレイでロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現していることが確認できた遺伝子群がロンベルグ症候群歯根膜細胞の表現型に関与しているのかについて確認するためにはこのiPS細胞化したロンベルグ症候群歯根膜細胞を用いる必要がある。この細胞が樹立できれば、これらの遺伝子の機能解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて、顎顔面形態に異常を及ぼす先天性疾患の一つである「ロンベルグ症候群」の病因を解明することである。この目標を達成するために、平成24年度の研究計画では、「1.ロンベルグ症候群歯根膜細胞の幹細胞特性を明らかにする」ことと、「2.ロンベルグ症候群歯根膜細胞がin vivoにおいて組織形成へ及ぼす影響を明らかにする」ことを行い、平成25年度以降の研究計画では、「3.ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現する遺伝子の同定を行う」ことと、「4.ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現する遺伝子の機能を明らかにする」ことを行う予定にしていた。このうち1については、平成24年度のうちにロンベルグ症候群患者から採取した歯根膜細胞の培養を行い、間葉系幹細胞特性を調べた。このことから、この研究については順調に進展していると考えられる。また、2については、平成24年度から引き続き平成25年度もロンベルグ症候群歯根膜細胞を用いて人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作成を進めていたが、完成にはいたらなかったため、免疫不全マウスへの移植実験は平成26年度に行う予定にしている。また、3については、平成24年度に行ったフローサイトメトリー、および平成25年度に行ったマイクロアレイによって、ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現する遺伝子群の同定ができたため、この研究については順調に進展していると考えられる。4については、iPS細胞化されたロンベルグ症候群歯根膜細胞を用いる必要があるため、細胞が出来次第行う予定である。以上のことから、平成25年度までの研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究の推進方策としては、まず平成24年度および平成25年度で行っていた「ロンベルグ症候群歯根膜細胞がin vivoにおいて組織形成へ及ぼす影響を明らかにする」を引き続き行っていく。ロンベルグ症候群歯根膜細胞にOCT4・SOX2・KLF4・C-MYCを遺伝子導入して人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成する計画であるが、これまでの実験では未分化なiPS細胞への変化が認められなかったため、遺伝子導入の条件設定を変えてiPS細胞化のための最適条件を探していく。iPS細胞化されたロンベルグ症候群歯根膜細胞が樹立できた後に免疫不全マウスへの移植実験を行い、ロンベルグ症候群歯根膜細胞がin vivoにおいて組織形成へどのような影響を及ぼすのかを調べていく。また、この研究に加えて「ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現する遺伝子の機能を明らかにする」の研究も行っていく。平成24年度および平成25年度の研究においてフローサイトメトリーおよびマイクロアレイを行い、ロンベルグ症候群歯根膜細胞に特異的に発現する遺伝子の同定を行った。その結果、ICAM-1、NCAM-1、SSEA-4、ICAM-2、POU3F2、PSCD1、TNFSF8、SPASTなどの遺伝子とロンベルグ症候群の表現型が関係している可能性が示唆された。従って、平成26年度には、これらの遺伝子群の機能を調べるために強制発現または発現抑制ベクターを作成し遺伝子導入を行うなどの手法を用いた実験を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度から平成25年度にかけてロンベルグ症候群歯根膜細胞を用いた人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作成を進めていたが、完成にはいたらなかった。このため、この細胞を使用する免疫不全マウスへの移植実験を平成26年度に行う予定にしているため、次年度使用額が生じた。また、当初想定していたよりも旅費・人件費・謝金の費用が少なかったことも、次年度使用額が生じた理由である。 今回発生した次年度使用額の分については、ロンベルグ症候群歯根膜細胞を用いたiPS細胞の作成、および免疫不全マウスへの移植実験に使用する予定である。また、本年度は研究最終年度であり、研究成果発表を行う必要があるため、そのための旅費・人件費・謝金として使用する予定である。
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