研究課題/領域番号 |
24593094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
上田 宏 広島大学, 病院(歯), 講師 (20304446)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 睡眠時無呼吸症候群 |
研究概要 |
本年度は、我々が臨床実用化を目指す睡眠時無呼吸症候群に対する新しい口腔内装置の気道への影響を明らかにすることを目的としている。まずは本装置を使用する睡眠時無呼吸症候群患者を集めて研究内容を説明し、同意を得ることから始める必要があり、現在10数名の被験者が集まりつつある。現在、装置未装着および装着時の側面頭部X線写真撮影を行い、気道拡大率を測定することを行なっている。特筆すべきは、これまで数多くの研究では立位または座位での撮影がほとんどであったが、本研究において睡眠時を想定した仰臥位におけるX線撮影を行ったことに新規性を見出すことができる。X線分析方法の妥当性については、本年度International Journal of Orthodonticsに”Enhanced increase in pharyngeal airway size in Japanese Class II children following a 1-year treatment with an activator appliance.”というタイトルで投稿、アクセプトされた。現在の仰臥位における側面頭部X線撮影は、完全規格ではないため撮影後に補正ができ、精密な比較解析が可能となるような工夫を行なっているところである。 また引き続き3次元解析を目指し、CT(Computed Tomography)撮影を行うシステムを確立しつつある。近年広く浸透している歯科用CBCT(Cone Beam Computed Tomography)では、撮影時に立位または座位となるため、本研究では仰臥位で撮影する一般CTを採用することにしている。来年度は被験者に対してこのシステムを運用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の達成度は「おおむね順調である」と考える。その根拠として、本年度の研究計画である、臨床実用化を目指す睡眠時無呼吸症候群に対する新しい口腔内装置の気道への影響を明らかにすることについて、現在10数名の被験者が集まっており、睡眠時を想定した仰臥位におけるX線データを順調に蓄積していることが挙げられる。分析についても、今後使用する予定である分析方法を用いた我々の先行研究論文が、本年度に国際学術雑誌に掲載されることになっている。また、引き続き行う予定である3次元解析については、被験者選定に入っており当院医科との協力体制が構築され、システムが完成次第速やかに開始する予定にしている。現在は、シミュレーションCTデータを用いて、気道エリアの境界設定や気道分析項目に関して最も安定した分析方法を確立しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、前年度から蓄積している仰臥位側面頭部X線データの分析を行なっていき、2次元の気道拡大様相を明らかにする。同時に3次元データとして、仰臥位一般CTデータを蓄積し、3次元解析を進めていく。解析には、DICOM viewer (digital imaging and communications in medicine)およびOsiriXソフトウエア上で最も安定した分析方法を確立して、角度、距離および面積、容積計測を行う。 また、予算決定額の変動により、当初購入予定であった携帯用筋電計の購入を変更し、早速25年度に予定していた口腔内装置を介して歯列にかかる負荷を計測する実験を開始する。本実験では、口腔内装置として従来広範に使用されている上下床固定型装置と、上下床可動型の新しい装置を用いて比較を行う。被験者として成人ボランティア10名を選択し、短時間ではあるが口腔内装置装着後に左右側方運動や上下運動を行った時の荷重をひずみセンサーで測定、記録する。近年、睡眠時無呼吸症候群における口腔内装置の長期使用が歯列・咬合の永久的変化をもたらすことが懸念されており、本研究から、我々が臨床実用化を目指す新しい口腔内装置が装着中の歯列への負荷が軽減されていることが詳細に明らかになることが予想される。 26年度には本装置による歯の移動に関する副作用を詳細に調べるため、睡眠時無呼吸症候群患者において歯の移動初期に見られる現象の経時的変化を記録する。装置撤去後の咬合接触面積、咬合力を咬合力分析装置(オクルーザー、FUJIFILM、現有)にて測定し、装置装着による歯列への違和感や痛みについてはVisual Analogue Scale (VAS)を用いて客観的評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算決定額の変動により、当初購入予定であった携帯用筋電計の購入を変更したため、本年度は50万円を超える備品の購入計画はない。25年度は主に前年度から引き続き睡眠時を想定した仰臥位におけるX線データの2次元分析を行い、さらに3次元解析については、仰臥位一般CTデータの蓄積し、分析を進めていく予定である。さらに25年度は、口腔内装置を介して歯列にかかる負荷を計測する実験を開始する。本実験では、口腔内装置装着後に左右側方運動や上下運動を行った時の荷重をひずみセンサーで測定、記録することが目的であり、必要な消耗品購入のため物品費用を計上している。 また26年度に開始予定である、睡眠時無呼吸症候群患者における本装置による歯の移動に関する副作用を詳細に調べる研究を本年度に前倒しして行う場合、歯の移動初期に見られる現象の経時的変化を記録するため、患者の協力のもと、咬合接触面積および咬合力データを記録する必要があり、それに対する謝金の支払いを執行する必要がある。 最後に、本年度も研究成果を国内学会および国内、国外の専門学術雑誌に投稿する予定であるため、研究費をその旅費および投稿料、英文校正料等に執行する予定である。
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