研究実績の概要 |
歯周組織微小環境において、アレルギーによりおこる細胞外基質代謝異常に加えて歯の移動という力学的負荷がかかることが病的な歯根吸収を惹起するとの仮説を立て、コラーゲンなどの細胞外基質とその代謝酵素の動態を調べることを目的とした。 本研究では、喘息や食物アレルギーモデルとしてよく用いられる卵白アルブミン(OVA)感作を行ったBrown Norway(BN)ラットを用いた。OVA投与群、OVA非投与群に対し、それぞれ矯正力(OF)負荷群と矯正力非負荷群を設定し、(OVA-/OF-)、(OVA-/OF+)、(OVA+/OF-)、(OVA+/OF+)の4群に分類し評価した。矯正力は、約10gの負荷を持続的に発揮するNi-Tiコイルスプリングを用いた。各群での歯周組織におけるMMPs, TIMP-1, TIMP-2変化を経時的に測定した。 予備実験後、ラットをOVA投与および矯正力負荷(24時間)群、OVA投与群、矯正力負荷(24時間)群、対照群の4群に分けて実験を行い、M1周囲の組織切片作成および周囲組織のRNA抽出を行った。 組織切片を用いて、MMP-2、MMP-9、MMP-13、TIMP-1、TIMP-2について免疫組織学的解析を行ったところ、歯根膜および周囲歯槽骨において、発現が確認された。 RNAサンプルを用いて、MMP-9、TIMP-1、TIMP-2についてreal-time RT-PCR解析を行った。その結果、TIMP-1については有意にOVA投与群における矯正力を負荷した群で発現量の上昇が認められ、MMP-9、TIMP-2でも同様の傾向が認められた。さらに、アスピリン投与により、これら細胞外基質代謝酵素やその阻害剤は顕著に減少する傾向があることを観察した。 本研究により、アレルギーと矯正的歯の移動時における歯根吸収の関連にこれらの因子が関連することが示唆された。
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