研究課題/領域番号 |
24593106
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
川上 正良 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20244717)
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研究分担者 |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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キーワード | 発生・分化 / 細胞・組織 / 遺伝子 / 歯科矯正学 / 国際情報交換 カナダ |
研究概要 |
Wnt/beta-cateninシグナルは、身体の形態形成を司るシグナル経路である。本研究では、Dickkopf-1(DKK1; beta-catenin inhibitor)を用いてWntシグナルを阻害した場合の顎顔面の発生を調べた。前年度、上顎突起が前頭鼻突起と癒合する直前のStage 20にDKK1を投与すると、Lhx8 、Msx1、Msx2遺伝子発現の減少が認められ、上顎に著明な骨欠損を生じることを示した。今年度は、DKK1の作用時期を調べるために、上顎突起が前頭鼻突起と癒合した後(Stage 26)にDKK1を作用させた。前回と同様、Beads埋入6時間後に、上顎突起を摘出し、RNAを抽出後real time RT-PCRで定量化して評価した。その結果、Stage 26にDKK1を投与しても、Lhx8 、Msx1、Msx2遺伝子発現にいずれも有意差が認められなかった。また、その後のStage 38においても頭蓋骨格に変化を生じなかった。この結果、DKK1は、顔面突起が癒合する直前に強く働くが、癒合した後はあまり作用しないことが明らかとなった。 一方、DKK1を投与した上顎突起をcleaved caspase-3で免疫組織染色すると、beads周辺には一過性のapoptosisが認められた。しかし、投与後48時間では、apoptosisが認められなかった。したがって、DKK1による骨欠損や遺伝子発現の減少は、beads埋入による器械的障害によるものではないことが示された。 以上のことから、Wntシグナルは、顎顔面の発生期に特異的に作用し、顔面突起が癒合すると作用が減弱することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in situ hybridizationの発現やreal time RT-PCRのデータにばらつきがみられ、結果をまとめるのに時間を要しているが、現在までおおむね順調に計画が遂行されている。頭蓋骨格標本の作製も行い、骨形成の観察結果をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続きWntシグナル阻害による各種遺伝子発現の変化を調べる。現在まで、real-time RT-PCRの数値にばらつきが大きいので、サンプル数を増やし、データを整理したい。データを追加し整理した後は、論文にまとめ、年度内に学会発表ならびに論文投稿の予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度未使用額が38,197円あり、今年度請求額1,300,000円と合わせて1,338,197円の次年度使用額が生じた。 論文掲載が決定しているものがあり、今後論文掲載料ならびに印刷費として支払予定である。また、学会出張と顕微鏡画像処理装置の今年度購入を予定している。
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