齲蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌が感染することが、小児の齲蝕発症に大きな影響を与えることは明らかであり、その感染を遅らせることができれば、小児を齲蝕ないしその治療の苦痛から救うことに繋がるものと考えられる。 本研究ではまず、歯垢中にストレプトコッカスミュータンス菌が検出される小児と、検出されない小児との間に、歯周病原性細菌として重要と考えられている3種類の細菌、P.gingivalis、T.denticola、T.forsythensisならびに、小児の若年性歯周炎との関連が指摘されている、A.actinomycetemcomitans の有無に差があるのかを検討した。 ストレプトコッカスミュータンスがプラーク内に存在している小児は327名中121名で37%とやや比率が低かった。ストレプトコッカスミュータンスが口腔内に存在する121名と存在しない206名で、P.gingivalis、T.denticola、T.forsythensis、A.actinomycetemcomitansの検出された割合(%)はそれぞれ、16:12、0:0、26:30、77:77という結果であり、歯周病原性細菌4種の有無には全く相関がみられなかった。母親についてもその割合(%)はそれぞれ22:25、55:49、4:2、79:84という結果であり、小児、母親ともに、ストレプトコッカスミュータンスと歯周病原性細菌とは独立して存在しているものと考えられた。 次にT-RFLP法が口腔内細菌叢の特徴を評価する上での、可能性とその限界に関して検討を行った。被験者から採取した歯垢から得られた細菌DNAをT-RFLPと次世代シーケンサーで同時に分析し比較した。 その結果T-RFLPを用いて10種類の口腔内細菌の群集解析が可能であり、細菌全体に対する10種類の細菌の比率は、シーケンサーによって得られたより詳細なデータとほぼ比例していた。
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