研究課題
歯髄細胞は様々な細胞へ分化誘導を制御できる可能性を有し、かつ脱落乳歯や抜去智歯、歯科矯正治療における便宜抜去歯などから容易に採取可能であるため、再生医療の材料として有望な細胞である。我々は本研究において、ヒト歯髄細胞を用いた自家移植による再生医療の実現を最終目標とし、ヒト歯髄細胞の特異形質を決定する遺伝子の同定を行った。歯髄細胞が有する特異形質の同定を目的として、ヒト歯髄細胞及びヒト骨髄由来間葉細胞からmRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。総括的遺伝子発現パターンの比較では、ヒト歯髄細胞とヒト骨髄由来間葉細胞は大変高い相関を示し、遺伝子発現の多くは相似していることが示された。マイクロアレイ解析において、ヒト歯髄細胞とヒト骨髄間葉細胞間で、特に顕著な差が認められた石灰化調節因子群の中で石灰化促進因子としてALPとBMP-2、石灰化抑制因子としてピロリン酸合成酵素(ENPP-1) とマトリックスグラタンパク (MGP) が認められた。ヒト歯髄細胞はヒト骨髄間葉細胞に較べALPでは約2~4倍、BMP-2では約3倍強い発現量が認められた。一方、ヒト歯髄細胞はヒト骨髄間葉細胞に較べENPP1は約30%程度、MGPは3%程度の発現しか認めず、ヒト歯髄細胞の石灰化抑制因子の発現は、ヒト骨髄間葉細胞に較べ極端に低いことが示唆された。また、Real Time PCR法を用いた解析では、ヒト歯髄細胞はヒト骨髄間葉細胞と較べALPは約25~65倍、BMP-2では71~80倍の発現量を示し、マイクロアレイ解析の再現性を得ることができた。以上のヒト歯髄細胞を用いた遺伝子解析の結果より、ヒト歯髄細胞は硬組織形成に非常に有利な形質を有する細胞であり、硬組織再生医療に臨床応用できる可能性を有する細胞群であることが示唆された。
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J. Neurosurgery
巻: in press ページ: in press
Clinical Advances in Periodontic
巻: 4 ページ: 81-87
10.1902/cap.2012.120055