研究実績の概要 |
我々はこれまで、歯周炎罹患歯肉局所で、特異的に転写増強される遺伝子群及び抑制される遺伝子群を画期的なDNA Microarray (GeneChip Human genome array U133)を用いて、5万余の遺伝子の中から網羅的検索を行った。その結果、歯周炎罹患歯肉組織中において、白血球血管内移動経路と同時にアルツハイマー病関連遺伝子群の発現上昇を歯周組織で発見し報告した(J Periodontal Res 2011) 。中でも、Amiloid beta (A4) precursor protein(APP), 炎症性サイトカイン interleukin (IL)-1 beta, 補体成分complement component 1 (q subcomponent, A chain) (C1QA)など歯周炎とADに共通する炎症関連遺伝子群・生物学的経路の亢進も突き止めた (Kubota et al, J Dent Res, Spple.3404, 2010) これまで、APPはAD組織以外での報告は少なく、創傷の治癒や腫瘍組織での報告があるのみで、本研究では歯周炎罹患歯肉局所での発現細胞の局在同定、更にその発現量が有意に上昇していることを初めて報告した(Kubota et al, Archs Oral Biol 2014)。APP, IL-1beta, C1QA は、相互に協調して機能しておりこれら遺伝子の発現解析は、慢性炎症による歯周炎組織破壊と原因不明な加齢関連炎症性疾患であるADとのつながりを考える上できわめて貴重な結果をもたらした。既にPLOSONE2016をはじめADと歯周炎の関連論文に多数引用されている。APPの関わるネットワーク遺伝子について更に範囲を広げて追加研究を行い、中間成果を国際学会(EuroPerio 8 2015) にて報告した。
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