研究課題/領域番号 |
24593121
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉田 典子 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30313547)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 閉経後女性 / PPARガンマ / 遺伝子型 / 肥満 / 骨粗鬆症 / 歯周炎 |
研究概要 |
核内レセプターPPARガンマは炎症・肥満・骨粗鬆症との関連が知られている。閉経後女性においては骨粗鬆症および肥満のリスクが増大する。そこで閉経後女性を対象に肥満・骨粗鬆症および歯周炎と、PPARガンマPro12Ala遺伝子型との関連性を調べ、PPARガンマPro12Ala遺伝子多型が、これらの疾患の共通リスクであるか否かを解析した。 対象は新潟市の閉経後女性359名であった。書面による同意を得て末梢血を採取しDNAを抽出した。遺伝子型はPCR-RFLP法にて同定した。骨密度・肥満および歯周炎についての各種パラメーターと血清ビタミンDレベルを測定した。 解析の結果、PPARガンマPro12Ala遺伝子多型は独立では骨密度とも歯周炎とも有意な関連性を示さなかった。しかしAlaアレル保有者においてのみ、付着の喪失レベルと骨密度との間、骨密度と血清ビタミンDの間、およびポケット深さ4mm以上の部位の割合と血清ビタミンDの間に、有意な正の相関が認められた。すなわちPPARガンマ遺伝子多型は骨密度と歯周炎の関係を修飾する因子である可能性が考えられる。結果は国際学術雑誌Oral Diseasesに掲載された。 また、肥満と歯周炎についての解析から、Alaアレル保有者においてのみ炎症マーカーである高感度CRPと歯周炎が相関を示し、Alaアレル非保有者においてのみ高感度CRPと肥満度指数BMIが相関を示すことを発見し、国際学術雑誌に投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的のうち、初年度である平成24年度の計画は閉経後日本人女性においてPPARガンマPro12Ala遺伝子多型の頻度と歯周炎・肥満・骨粗鬆症のケース・コントロール解析を行って、これらの疾患の間の関連性の有無、またそれらの疾患個々と疾患相互の関係におけるPPARガンマPro12Ala遺伝子多型の影響を疫学的に評価することであった。 計画通り上記解析を行い、結果として、閉経後日本人女性において、PPARガンマPro12Ala遺伝子多型は独立では骨密度とも歯周炎とも関連性を示さなかったが、この遺伝子多型は骨密度と歯周炎との間の関係を修飾する因子のひとつである可能性を示唆した。結果は国際学会EUROPERIO7で発表し、論文が国際学術雑誌であるOral Diseasesに掲載された。 また、肥満と歯周炎についても解析を行い、その結果、Alaアレル保有者においてのみ血中の炎症マーカーである高感度CRPと歯周炎が相関を示し、一方でAlaアレル非保有者においてのみ高感度CRPと肥満度指数BMIが相関を示すことを発見し、JADRにて発表した。現在、その結果を国際学術雑誌に投稿中である。 したがってこれらについて計画どおりに研究を行い成果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究計画に沿って、PPARガンマPro12Ala遺伝子導入した脂肪細胞の機能解析を行う。ヒト脂肪細胞前駆細胞にPPARガンマ12ProあるいはAla遺伝子をcalcium phosphate precipitation法にてtransfectし、インシュリンまたは天然脂質にて脂肪細胞に分化させた後、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis刺激によるアディポネクチン、レプチンあるいはTNF-alphaの発現を測定、比較する。この結果を国内あるいは国際学会にて発表する。 さらに最近東アジア人での大規模研究から糖尿病に関連性を示すPPARを含む多数の遺伝子型が発表された。そこでこれらの遺伝子型が本研究対象の閉経後女性において糖尿病・肥満および歯周炎に関連性を示す可能性があると予想し、倫理委員会の承認と対象者の同意のもとにMAEAおよびSIRT1遺伝子型を同定した。現在、疾患相互および遺伝子型との関連を解析中である。遺伝子型タイピングした糖尿病・肥満関連遺伝子型について疾患相互および遺伝子型と疾患の関連性の解析を進め結果を学会にて発表する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
閉経後女性におけるMAEAおよびSIRT1遺伝子型のタイピングは3月中にフィルジェン社に依頼し結果を受け取り4月12日に1956360円を支払った。 平成25年度においては細胞実験に使用する消耗品費として70万円、日本歯周病学会および日本歯科保存学会における成果発表にかかる旅費6万円、論文掲載料5万円を予定している。
|