核内レセプターPPARガンマは炎症を抑制し脂質代謝調節機能も有する転写因子である。従来PPARガンマと炎症疾患および肥満・骨粗鬆症との関連が知られていた。閉経後女性においてはエストロゲンの減少に伴い骨粗鬆症および肥満リスクが増大する。 そこで本研究ではPPARガンマPro12Ala遺伝型がこれらの疾患の共通リスクか否かを明らかにするため新潟市横越地区の閉経後女性359名を対象に肥満・骨粗鬆症・歯周炎の指標とPPARガンマPro12Ala遺伝型頻度分布との関連性を調べた。 その結果、歯周炎と骨粗鬆症あるいは骨密度との間に直接の関連性は認められなかったが、PPARガンマPro12Ala遺伝子多型のAlaアレル保有者に限定して歯周炎の臨床パラメーターと骨密度の間に正の相関が認められた。次に、炎症マーカーである血清高感度CRPに着目し解析した結果、Alaアレル保有者においては歯周炎パラメーターと高感度CRPが、Alaアレル非保有者ではBMIと高感度CRPが正の相関を示した。これらの成果を発展させ、ベータ3アドレナリン受容体遺伝型と肥満および歯周炎の関係を調べたところ、肥満女性において歯周炎とベータ3アドレナリン受容体遺伝型との関連性が認められた。さらに最終年度の研究としてPPARガンマ遺伝型とベータ3アドレナリン受容体遺伝型の組み合わせと、歯周炎、肥満との関係を調べた結果、肥満女性において、これらの遺伝型の交互作用項と歯周炎パラメーターに関連性が認められた。 研究期間全体を通しての解析結果から、PPARガンマPro12Ala遺伝子多型のAlaアレル保有は歯周炎と肥満・骨粗鬆症との関連を強める可能性が示唆された。これらの成果は歯周炎と肥満・骨粗鬆症のリスク診断に寄与するとともにPPARガンマを制御することがこれらの疾患の治療に役立つ可能性を示している。
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