研究課題/領域番号 |
24593125
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木戸 淳一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10195315)
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研究分担者 |
稲垣 裕司 徳島大学, 大学病院, 助教 (50380019)
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キーワード | 低酸素環境 / HIF / 炎症性サイトカイン / 血管新生因子 / 抗菌ペプチド |
研究概要 |
H24年度に行った低酸素培養による遺伝子発現への影響のDNAマイクロアレイ分析により237個の遺伝子変動が認められた口腔上皮細胞を用いて,その他の遺伝子発現への影響や変化の認められた遺伝子の蛋白発現への影響を検討した。また,低酸素シグナルの主因子であるHIF-1aの蛋白の蓄積をWestern blot法で調べた。 低酸素状態により,血管新生作用を有するAngiopoietin-like 4や細胞接着因子のICAM 1の遺伝子発現上昇が認められた。また,遺伝子発現上昇が見られたVEGFの蛋白レベルでの増加およびカルプロテクチン蛋白の減少がみられ,遺伝子発現と同様の変化が確認された。Western blot法により低酸素培養でHIF-1a蛋白の蓄積が認められ,さらに,HIF-1蓄積を起こすDeferoxamineにより,低酸素培養と同様のADM, VEGFおよびTNF-aなどの遺伝子発現の増加が認められた。一方,HIF-1のシグナルを阻害するChetominにより低酸素誘発性のADM発現の増加が減少したが,TNF-aではChetominの効果は認められなかった。 また,H25年度の計画内容である低酸素+P. gingivalis由来LPSの影響の検討では,TNF-a, ADMおよびTLR2の遺伝子発現について,低酸素とLPSの相加的な発現増加が認められた。 現在,計画していた低酸素と糖尿病合併症の主因物質である最終糖化産物(AGE)による炎症性サイトカイン発現への影響を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度の後半に予定していた低酸素状態による複数の遺伝子および同蛋白質の発現への影響の検討をH25年度前半に行ったため,H25年度の後半に予定していた低酸素状態とAGEによる炎症性サイトカインや血管新生因子などへの共作用の影響の検討を,現在行っており,当初の計画からは若干遅れている。また,これは,AGEの作用効果の判定に比較的長期間の培養が必要である一方,細胞の生存率から長期の低酸素培養が困難であることが判明したためでもある。 現在,2つの因子の効果を調べるための培養条件の検討を行っているが,研究計画全体としてはその進行に著しい遅延は生じないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後,現在行っている低酸素環境下でのAGEの影響を調べることにより,低酸素状態でのLPSおよびAGEによる炎症や組織破壊の増悪化への作用機構を解明する。また,歯周組織細胞での低酸素シグナルの伝達経路を解明するため,HIF-1のsiRNAを合成し,上皮細胞や線維芽細胞へのトランスフェクションにより低酸素効果の抑制を調べる。また,HIF阻害剤や同因子のDNA結合阻害剤を用いて低酸素状態によるTNF-aやVEGF発現増加に対するHIFの関与を検討する。さらに,MAPK阻害剤により,本経路でのMAPKの関与を検討するとともに,LPS作用に関与するTLRの中和抗体やNF-kB阻害剤を併用し,低酸素状態とLPSとの増悪化作用の抑制が可能であるかどうかを調べる。
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