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2014 年度 実施状況報告書

Toll様受容体を標的とした歯周組織の炎症制御に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24593126
研究機関長崎大学

研究代表者

吉村 篤利  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (70253680)

研究分担者 金子 高士  福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (10284697)
原 宜興  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (60159100)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード歯周炎 / 遺伝子多型 / Toll-like receptor 4
研究実績の概要

プラーク中の菌体成分は、Toll-like receptor (TLR)などのパターン認識レセプターにより最初に認識される。 菌体成分を認識すると直ちに自然免疫系は活性化し、歯周組織に炎症反応を惹起する。この反応は感染防御のために必須であるが、結果として歯槽骨吸収などの組織破壊も引き起こす。有益な感染防御能を損なうことなく組織破壊を最小限に抑えることができれば、歯周疾患の進行を抑制するために役立つことは間違いない。本研究は、TLRを介したプラークからの刺激を標的として、歯周組織の炎症反応を制御することを目的とした基礎的研究である。
本年度は、TLR4遺伝子多型rs11536889と歯周炎進行との関連を明らかにするため、rs11536889におけるG/G、G/C、C/C遺伝子型被験者それぞれ24、10、9名を対象として、歯周組織の状態およびプラーク中の歯周病原細菌数について比較検討した。長崎大学病院に来院した歯周病患者に研究内容を説明し同意を取得後、各患者の口腔内で歯周ポケット最深部を被験部位とした。被験部位のプラーク指数、プロービング時の出血、ポケット深さ、アタッチメントレベルを記録した。また、被験部位の歯肉縁下プラークを採取し、プラーク中の歯周病原細菌数を定量的PCR法で解析した。結果として、G/C群のアタッチメントレベルは、G/G群より有意に大きかった。C/C群のアタッチメントレベルは、G/G群より大きい傾向にあったが、有意差はなかった。ポケットの深さ、プロービング時の出血の有無についても、C/C群およびG/C群は、G/G群よりも大きい傾向にあったが、有意差はなかった。また、プラーク中の歯周病原細菌数については、各群間に有意差がみられなかった。
これらの結果は、TLR4遺伝子型の違いによるTLR4の発現量の差が、歯周炎の進行に影響した可能性があることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究から、TLR4遺伝子多型rs11536889が、歯周病患者さんのアタッチメントレベルに影響している可能性が示唆された。一昨年の研究では、TLR4遺伝子多型rs11536889が、マイクロRNAの結合を介して宿主細胞のTLR4発現量を調節していることが明らかとなっており、TLR4遺伝子におけるrs11536889一塩基多型によるTLR4の発現量の差が、歯周炎の進行に影響したと推察される。これらの研究結果は、歯周組織の炎症反応を大きく左右すると考えられる歯肉縁下プラーク中の歯周病原細菌およびその菌体成分に対するTLR4を介した宿主応答が遺伝的に制御されている可能性があることを明らかとしたものであり、期待通りの成果と言える。また、昨年の研究結果から、歯肉縁上プラークの蓄積や年齢も、歯肉縁下プラークのTLR2およびTLR4刺激作用に影響していることが明らかとなっており、TLRを介して歯周組織の炎症反応に関与する因子が徐々に明らかとなりつつある。しかしながら、これらのTLR2やTLR4を介した細胞刺激がどのように歯周病の進行に関与しているかについては、さらに詳細な解析が必要である。これらを総合的に判断して、全体としてはおおむね順調と評価した。

今後の研究の推進方策

平成24~26年度の研究により、TLR4遺伝子多型rs11536889と宿主細胞のTLR4発現量の関連や歯周組織に与える影響、歯肉縁下プラークのTLR2およびTLR4刺激作用とこれを制御する因子との関連が明らかとなった。これらの結果を踏まえて、平成27年度は、TLR4遺伝子多型rs11536889と歯周炎進行との関連を、より詳細に明らかにするため、rs11536889におけるG/G、G/C、C/C遺伝子型被験者それぞれ約10名を対象として、歯周ポケット最深部のみならず、口腔内全体の歯周組織の状態について比較検討する。また、平成26年度に既に着手している歯肉線維芽細胞の反応性についても解析を続行する。まず、研究内容について十分に説明を行い、研究協力に同意の得られた被験者より、歯周外科時に切除され不要となった歯肉の提供を受け、その一部を用いてTLR4遺伝子rs11536889の遺伝子型をスクリーニングする。遺伝子型の明らかとなった被験者の4 mmおよび6 mm以上のポケットの歯の割合やプロービング時の出血の割合を比較する。また、各遺伝子型被験者から樹立された歯肉線維芽細胞をLPSで刺激して、反応性を比較する。歯肉線維芽細胞をLPSで刺激してIL-6などの炎症性サイトカイン、matrix metalloproteinaseの産生量や増殖率やアポトーシスへの影響について各遺伝子型群間で比較する。また、遺伝子型が明らかとなった被験者の歯肉溝から歯肉溝滲出液と歯肉縁下プラークを採取し、歯肉溝滲出液中のサイトカインレベルと歯肉縁下プラークのTLR4刺激性、細菌学的組成を比較し、歯周病進行への影響を解析する。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度に、TLR4遺伝子多型rs11536889における遺伝子型と歯肉線維芽細胞のLPS反応性および歯肉片を採取した歯周外科部位の歯周組織の状態との関係を解析予定であったが、症例数が目標に達していないため、計画を一部変更し、引き続き症例数を増やすとともに、現在までの結果を国内外の学会で発表することとしたため、未使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

このため、TLR4遺伝子多型rs11536889における遺伝子型と歯肉線維芽細胞のLPS反応性および歯肉片を採取した歯周外科部位の歯周組織の状態との関係を引き続き解析するとともに国内外の学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] T細胞は咬合性外傷で起こる骨吸収に関与しない2015

    • 著者名/発表者名
      中村弘隆, 鵜飼 孝, 吉永泰周, 白石千秋, 吉永美穂, 吉村篤利, 原 宜興
    • 雑誌名

      T細胞は咬合性外傷で起こる骨吸収に関与しない

      巻: 58 ページ: 35-41

    • DOI

      10.11471/shikahozon.58.35

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] グラム陰性菌またはグラム陰性菌の菌体破砕物が感作ラットの歯周組織に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      吉永泰周、長野史子、金子高士、鵜飼孝、吉村篤利、尾崎幸生、吉永美穂、白石千秋、中村弘隆、蔵本明子、高森雄三、野口惠司、山下恭徳、泉聡史、原宜興
    • 雑誌名

      日本歯科保存学会雑誌

      巻: 57 ページ: 154-161

    • DOI

      10.11471/shikahozon.57.154

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] TLR2およびTLR4リガンド投与マウス歯肉における炎症性および抗炎症性サイトカインの発現2014

    • 著者名/発表者名
      尾崎幸生, 吉村篤利, 金子高士, 鵜飼 孝, 吉永泰周, Jorge Montenegro, Ziauddin SM, 白石千秋, 中村弘隆, 藏本明子, 原 宜興
    • 学会等名
      日本歯科保存学会2014年度秋季学術大会
    • 発表場所
      山形テルサ(山形市)
    • 年月日
      2014-10-30 – 2014-10-31
  • [学会発表] ラットにおけるインプラント周囲炎と歯周炎発症の病理組織学的比較2014

    • 著者名/発表者名
      高森雄三,熱田 生,吉永泰周,藏本明子,野口惠司,泉 聡史,山下恭德, 鵜飼 孝,吉村篤利,原 宜興
    • 学会等名
      日本歯周病学会2014年度秋季学術大会
    • 発表場所
      神戸国際展示場(神戸市)
    • 年月日
      2014-10-19 – 2014-10-19
  • [学会発表] Dental calculus induces IL-1β production in murine macrophages through the NLRP3 inflammasome2014

    • 著者名/発表者名
      モンテネグロ・ホルヘ、吉村篤利、エスエム・ジャウディン、金子高士、原 宜興
    • 学会等名
      日本歯周病学会2014年度秋季学術大会
    • 発表場所
      神戸国際展示場(神戸市)
    • 年月日
      2014-10-19 – 2014-10-19
  • [学会発表] RANKL priming accelerates osteoclast formation with resorptive activity in TNF-alpha-stimulated murine bone marrow macrophages independent of RANKL2014

    • 著者名/発表者名
      Yamashita Y, Ukai T, Takamori Y, Noguchi S, Montenegro Raudales JL, Nakamura H, Ozaki Y, Shiraishi C, Yoshimura A, Hara Y
    • 学会等名
      100th Anniversary meeting of American Academy of Periodontology
    • 発表場所
      モスコンセンター (サンフランシスコ)
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-22
  • [学会発表] LPS 感作と歯肉溝滴下による長い上皮性付着破壊に関する実験病理組織学的検討2014

    • 著者名/発表者名
      野口惠司、吉村篤利、鵜飼孝、白石千秋、吉永美穂、吉永泰周、藏本明子、高森雄三、泉聡史、原宜興
    • 学会等名
      日本歯科保存学会2014年度春季学術大会
    • 発表場所
      滋賀県立芸術劇場(大津市)
    • 年月日
      2014-06-19 – 2014-06-20
  • [備考] 長崎大学歯学部歯周病学分野ホームページ

    • URL

      http://www.de.nagasaki-u.ac.jp/education/dept_perio.html

  • [備考] 長崎大学 研究者総覧データベース

    • URL

      http://research.jimu.nagasaki-u.ac.jp/IST

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公開日: 2016-05-27  

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