研究課題
プラーク中の菌体成分は、Toll-like receptor (TLR)などのパターン認識レセプターにより最初に認識される。菌体成分を認識すると直ちに自然免疫系は活性化し、歯周組織に炎症反応を惹起する。この反応は感染防御のために必須であるが、結果として歯槽骨吸収などの組織破壊も引き起こす。有益な感染防御能を損なうことなく組織破壊を最小限に抑えることができれば、歯周疾患の進行を抑制するために役立つことは間違いない。本研究は、TLRを介したプラークからの刺激を標的として、歯周組織の炎症反応を制御することを目的とした基礎的研究である。本年度は、歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークのTLR2およびTLR4刺激作用の関連について解析した。また、歯肉縁下プラークのTLR2およびTLR4刺激作用と歯肉縁下プラーク刺激により末梢血単核球が産生する炎症性サイトカイン量との関連についても解析した。歯肉縁上プラークのTLR2およびTLR4刺激作用は、歯肉縁下プラークのTLR2およびTLR4刺激作用と比較して、それぞれ有意に強く、歯肉縁上プラークのTLR2およびTLR4刺激作用が歯肉縁下プラークのTLR2およびTLR4刺激作用に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、歯肉縁下プラークによって誘導される末梢血単核球からのIL-8やTNF-α等の炎症性サイトカインの産生は、TLR4アンタゴニストであるlipid IVaによって著しく抑制されるが、抗TLR2抗体ではほとんど抑制されないことが明らかとなった。このことから、歯肉縁下プラークによる炎症性サイトカインの誘導は、主にTLR4刺激作用に依存していることが明らかになった。歯肉縁上および縁下プラークのTLR4刺激作用を制御することは、歯周疾患の進行を抑制するために有効であることが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件) 備考 (2件)
Journal of Periodontal Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/jre.12353
Journal of Periodontology
10.1111/jre.12370
Clinical Oral Implants Research
10.1111/clr.12777
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10.1016/j.archoralbio.2015.06.002
http://www.de.nagasaki-u.ac.jp/education/dept_perio.html
http://research.jimu.nagasaki-u.ac.jp/IST