研究課題
現在インプラント周囲炎は、未だにどの治療法が優れているかという結論は導き出せていないため、この病変を未然に防ぐことは重要である。そこで本研究の目的は、インプラント周囲炎の発症前診断を確立するために調査する。本科学研究費申請期間においては、インプラント周囲炎の発症におよぼす全身的、局所的リスク因子の影響を明らかにする。この目的を達成するために、1. 明海大学歯学部付属明海大学病院歯周病科でインプラント治療が施された患者のデータベースの整理、2. 調査対象のリスク因子を決定するために文献的検討を行った。その結果を以下に示す。1.当科において1998年2月から2012年3月までの14年1か月間にインプラント治療が施された患者は342名 (男性104名、女性238名、平均年齢52.2 ± 10.6歳、range 18 - 76歳) であった。また、埋入インプラント本数は1233本 (1人あたり平均インプラント埋入本数3.6 ± 2.8本) であった。2.想定されるリスク因子としては、全身的リスク因子として性別、年齢、喫煙歴、インシュリン依存型および非依存型糖尿病、種々の原因による骨粗鬆症、冠動脈疾患、ステロイド療法、化学療法または頭頸部放射線療法の既往である。また、局所的リスク因子として、口腔清掃状況、インプラント周囲ポケット深さ、インプラント周囲角化歯肉の有無、インプラントの部位・表面性状・直径、歯周病の既往、ブラキシズムの有無である。本調査の結果、性別およびインプラント周囲角化歯肉の幅においてインプラント周囲骨の吸収量と相関していることが明らかとなった。また、口腔清掃状況やブラキシズムの有無についてもインプラント周囲炎発症患者では多い傾向が認められた。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
明海歯科医学
巻: 44 ページ: 208-216