研究実績の概要 |
歯周病は、タンパク分解酵素を持つ歯周病原細菌による組織破壊を伴う炎症性病変である。生体の中でも、口腔内は湿潤下にあり嫌気性や好気性細菌など多種多様の細菌が生息している。そのため、歯周治療後、一旦歯周病原細菌が駆除され治癒しても、再感染がおこる場合がある。その再感染源として、食物の流れなどの影響を受けにくく機械的清掃ができない口蓋扁桃部に注目した。一方、口臭は歯周病の一徴候であり、歯周病原細菌の初期感染を捕えられると考えられる。 【唾液と口蓋扁桃部細菌叢の違い】健康な被験者から唾液および口蓋扁桃部の細菌サンプルを採取し、細菌叢の違いを検索した。細菌叢の検索には、T-RFLP法を用いた。その結果、唾液では、口臭強度の弱い群と強い群の間で、T-RFに差は認められなかった。口蓋扁桃部では、口臭強度により、一部のT-RFに有意な差が認められた。さらに、この塩基配列を解析し、Neisseria, Haemophilus, Prevotellaなどがその候補として挙げられた。 【含嗽による口蓋扁桃部細菌叢の変化】含嗽により、口蓋扁桃部細菌叢が変化するか、また口臭に影響を与えるかについて検討した。Test群(塩化ベンゼトニウム)、Placebo群、Control群(含嗽なし)にわけ、介入試験を行った。その結果、T群では、口臭の有意な軽減が認められた。P群、Cl群では、有意な口臭の減少は認められなかった。細菌叢の変化では、P群、C群では有意な差が認められなかった。T群では、いくつかのT-RFsに含嗽後減少傾向が認められた。その変化した細菌は、Prevotella, Moraxella, Veillonella属であった。 【総括】このことは、口蓋扁桃部に定着した菌は変化しにくく感染源となりうることを示している。また、口蓋扁桃部付近の細菌叢は、短期の含嗽介入では変化が起こりにくく、新たな介入方法の導入が必要である思われた。
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