研究課題
IL-1の活性抑制に働く、IL-1レセプターアンタゴニストは歯周病の発症や進行を制御する歯周治療薬の一つになりうる可能性を探るべく、IL-1レセプターアンタゴニスト遺伝子欠損(IL-1RaKO)マウスに歯周病原細菌感染による実験的歯周炎を惹起し、歯周組織破壊の程度を野生型マウスとの間で比較検討した。その結果、IL-1RaKOマウスは野生型マウスに比べ、明らかに歯槽骨吸収が進行していることがCT検査でも病理組織学的観察においても明らかとなった。さらにそのメカニズムをIL-1RaKOマウス骨芽細胞を採取し調べたところ、骨吸収関連遺伝子の発現抑制と骨形成遺伝子の発現促進に深く関与していることを明らかとした。上記の結果をInfection and immunity, 82: 1904-1913, 2014に公表した。通常、モデル動物を利用しての実験的歯周炎ではヒトの歯周炎のような付着の喪失を観察されにくい傾向であるが、IL-1Ra KOマウスでは歯肉頂部に辺縁不整な上皮と結合組織線維の走行の乱れ,上皮直下に炎症性細胞浸潤,付着の喪失が観察された。そこで骨吸収だけでなく上皮の付着の制御にもIL-1Raは関与しているのではないかと考え、最終年度はヒト株化上皮細胞をRNA干渉によりIL-1Ra遺伝子発現を抑制した場合、どんな接着分子発現に影響を及ぼすかPCRアレイにより解析したところ、高いコラゲナーゼ3(MMP-13)遺伝子発現が観察され、IL-1RaがMMP-13発現についても制御していることが確認できた。そこで、今後、IL-1RaのMMP-13発現に与える影響について、今回の研究課題で利用した実験動物を引き続き利用して検討していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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