研究課題/領域番号 |
24593138
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
田中 昭男 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (10121823)
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キーワード | 幹細胞 / 歯周組織 / 再生歯科医学 / 歯周病 / 新規合成ペプチド |
研究概要 |
歯根膜幹細胞は、歯列矯正のため便宜抜去された歯あるいは抜去された埋伏智歯の歯根膜から分離した。抜去歯をPBS(Phosphate Buffered Saline)で洗浄し、次いでD-MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)で洗浄して外科用メスで歯根中央部表面から歯根膜組織を剥離し採取した。採取した歯根膜組織を1平方ミリメートルの大きさに細切し、その組織片を3 mg/mL type Icollagenaseおよび4 mg/mL dispaseのタンパク分解酵素で37℃、1時間作用させた。その後、10%ウシ胎児血清含有のD-MEMを加えて反応を停止しピペッティングを行い、細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液を70 μm径の篩のCell Strainerに通し、single cellの状態にし、1,000 rpmで5分、遠心分離して上清を捨て培地を加えて懸濁しT-75フラスコに播種した。その5~10日後にコロニーを形成している細胞を継代し(P0とする)、継代P3あるいはP4を用いて歯根膜幹細胞の同定を行った。同定には間葉系細胞マーカー(Vimentin)および間葉系幹細胞マーカー(STRO-1、SSEA-4)を用いて免疫染色によって実施した。得られた歯根膜幹細胞に新規骨形成剤ペプチドを作用させ3日および7日後に細胞を回収して市販キットによってRNAを抽出しNano DropでRNAの純度を確認し、現在、メインの研究については遺伝子解析中であり、遺伝子解析はまだ十分でない状況であるが、再生に関わるサブの研究については炎症性サイトカインによって歯根膜幹細胞が影響を受けることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度は歯根膜幹細胞を分離、培養して新規骨形成剤ペプチドを作用させ、細胞増殖能、Alkaline phosphatase(ALP)活性、オステオカルシン産生量、オステオネクチンmRNAの発現について予定以上の成果が上げられたが(J Periodontol 2013; 84: 1476-83)、細胞自体のRNAの抽出が十分でなく、今年度は予定の成果が半分以下である。現在、遺伝子解析を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
歯根膜幹細胞に新規骨形成剤ペプチドを作用させた遺伝子解析結果をできるだけ早く導き出し、このペプチドの効果を明確にして、今後のよりすぐれた歯周組織の再生を促進する物質の開発につなげたい。なお、このペプチドをラット歯周組織に作製した人工的歯槽骨欠損部に適用してセメント質様の硬組織形成を認めているので、より早く硬組織の再生を起こすため、このペプチドで刺激した歯根膜幹細胞シートを利用する予定である。動物実験としてラット歯根膜から分離培養した歯根膜幹細胞をこのペプチドで刺激し、温度応答性細胞培養器材を用いて培養し、細胞シートの作製法を確立する。細胞シートの作製法が確立できれば、ラット歯周組織の人工的歯槽骨欠損部に適用して歯周組織の再生状態を評価する予定である。
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