研究課題/領域番号 |
24593138
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
田中 昭男 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (10121823)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯根膜幹細胞 / 歯周組織再生 / 新規合成ペプチド / 網羅的遺伝子解析 |
研究実績の概要 |
歯の矯正のため便宜抜去された歯、あるいは抜去された埋伏智歯の歯根膜から分離した歯根膜幹細胞(PDLSCs)は間葉系マーカー(Vimentin)および間葉系幹細胞マーカー(STRO-1、SSEA-4)を用いて免疫組織化学的に間葉系幹細胞であることを確認した。 PDLSCsは①通常の培地で培養したもの、②骨芽細胞用培地で培養したもの、および③骨芽細胞用培地で培養のものに我々が開発したWYQNMIRのアミノ酸シークエンスからなる新規合成ペプチドを添加したものの3種類について網羅的遺伝子解析であるマイクロアレイ解析を行った。①および②をコントロールとして③との比較を行った。その結果、Leucine-rich repeat-containing protein (LRR) の遺伝子発現が①と比較して35倍増強していた。LRR 遺伝子は骨芽細胞に強く発現する遺伝子であるので、新規合成ペプチドは、PDLSCsを骨芽細胞へ分化させる機能を有している可能性が示唆された。しかし、試料によっては増強が顕著でないものもあった。その他の遺伝子では、PIP、SAA1、FKBP5、GPM6B、IGF2、CPMは10~41倍の発現の増強があり、RASL11B、XPNPEP3、STK31、MT1X、ANGPTL4は1つの試料に4~27倍の発現の増強があり、LEPは1つの試料に10倍の発現の増強があり、増強の弱い試料もあった。RERG、DPTは1つの試料に3~49倍、BMP 6 Precursorは3~6倍であった。また、thymosin betaが約2倍増強、osteopontin、osteonectin、osteocalcinは若干低下した。以上が主な遺伝子発現であり、骨芽細胞に発現するといわれているLRRおよびエナメルタンパクの発現に係るthymosin betaの発現の増強が新規合成ぺプチド刺激でみられたことから、本ペプチドの作用を分子レベルで解明できつつある。現在、細胞シートの作製を行っており、細胞の数はかなり増えてはいるが、まだ、in vivo実験に必要な細胞シートの作製には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抜去歯から歯根膜幹細胞を分離し、間葉系幹細胞の同定を免疫組織化学的に行い、新規合成ペプチドを作用させ、細胞増殖や骨芽細胞分化能を明らかにした。また、新規合成ペプチドを添加、培養した歯根膜幹細胞について網羅的遺伝子解析を行い、LRR遺伝子などの発現の増強を認めた。また、その他の遺伝子の発現についても明らかにすることができたが、試料によって遺伝子の発現程度に差があることも認められた。遺伝子発現には個体差があるかもしれないことを示唆している結果になっている。遺伝子発現までは順調に経過しているが、細胞シートの作製がまだ、十分でない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、細胞シートの作製の完成に向けて努力しているところである。細胞の培養環境の適切管理が重要である。コンタミを防ぐ努力が必要である。これらを解決し、細胞シートの作製を進めているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞シートの作製について困難を極め、順調に進まず、結果が安定しない。手技に問題があるのか、培養環境に問題があるのか、複数の要因が絡んでいる状況である。細胞シートの作製を安定化させる方策を検討しているため、有効期限のある製品の購入を見合わせている。再現性のあるデータを得る必要があるので、期間を延長して実験を再確認する必要があると考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞シート作製のための培養器具、培養液、抗生剤等の購入に充てる。
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