研究課題/領域番号 |
24593141
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
豊福 明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10258551)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯科心身症 / 舌痛症 / 脳機能画像 / SPECT / 口腔内セネストパチー |
研究概要 |
1.歯科心身症診断基準の策定;過去に作成した診断ガイドライン案を礎とし、当科外来患者の臨床データを基に歯科心身症の診断基準の策定を目指した。まずは統合失調症など明らかな精神障害を除外するために、PIPC(Psychiatry In Primary Care)の問診フォーマットを導入し、主治医ごとの診断バイアスを減らすべく規格化した。さらにデータの蓄積と解析を継続している。 2.臨床統計的調査と診断基準の整合性の検証;過去3年間の当科初診患者1210名の臨床統計的検討を行い、歯科心身症の診断基準の整合性を検証した。その結果、歯科心身症病名ごとの難治性の相違に加え、うつ病の既往が予後に有意に関与していることを明らかにした。その結果を第54回日本心身医学会総会などに発表した後に日歯心身誌に投稿し、印刷中である。 3.治療アルゴリズムの構築;本年度は歯科心身症に対する薬物療法の最適化を目的とし、投与薬剤の種類、初期用量、最大投与量、維持量、服薬継続期間などについて診療録を基にretrospectiveに検討した。種類としてはSNRI、NaSSAが主流を占めていたが、三環系抗うつ薬が必要な症例も相当数で認められた。更に詳細な検討を加え、より最適な治療アルゴリズムの構築を目指している。 4.脳機能画像研究;本年度は口腔セネストパチーを対象に99mTc-ECD によるSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射型コンピュータ断層撮影)を用いた脳機能画像研究を施行した。その結果、本症患者では側頭葉を中心に広汎な脳領域における局所脳血流量の左右差があることを明らかにし、Eur Arch Psychiatry Clin Neurosciに受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
歯科心身症の疫学的研究が比較的順調に進んでおり、臨床的に有意義な症例報告や海外雑誌への投稿論文が受理されるなど順調な成果をあげている。 中でも、口腔内セネストパチーは、幻覚や妄想とも言えない頑固な口腔異常感に対して精神科領域でも難治性が強調され、その病態は不明な点が多く残されたままであった。今年度、本症患者のSPECTで側頭葉を中心に広汎な脳領域における局所脳血流量の左右差があることを明らかにし、Eur Arch Psychiatry Clin Neurosciに受理された成果は大きいと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
歯科心身症は客観的所見に欠くという特性上、これまで本症の診断や治療の成否は患者の主観的症状に頼らざるを得なかった。しかし、近年の脳機能画像研究の進歩から本症患者の高次中枢性病態の客観的な解析が可能となりつつある。本学の症例数の豊富さを活かした臨床疫学的研究を推進し、非定型歯痛や舌痛症の治療反応性の予測因子の検討や矯正歯科領域の歯科心身医学的問題の検討も加味しつつ、更に精緻な歯科心身症の診断基準や治療アルゴリズムの検討を目指していく。特に歯科で最も問題となっている咬合の異常感について、Phantom Bite Syndromeを題材に臨床的データを絞り込んだ上で、SPECTなどの脳機能画像研究も加味して行き、より直接的な証拠を求めて病態仮説の検証を目指したい。さらに「どんどん悪くなる」と訴える進行性の病態については局所脳血流量に加え、脳形態の微妙な経年的変化についても検討を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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