研究課題
1.歯科心身症診断基準の策定: 過去に作成した診断ガイドライン案を礎とし、当科外来患者の臨床データを基に歯科心身症の診断基準の策定を目指した。明らかな精神障害を除外するために導入した、PIPC(Psychiatry In Primary Care)の問診フォーマットがほぼ定着してきた。現在そのデータの蓄積と解析を継続しているところである。2.臨床統計的調査と診断基準の整合性検証:本年度は特に咬合異常感(phantom bite)の患者130名の臨床統計的検討を行い、精神科的疾患のcomorbidityと薬物反応性を検討した。その結果、真に精神科で治療を受けるべき本症患者は約20%にすぎないことや、歯科処置後に発症した患者群では精神科的既往歴が有意に少ないため、一概に精神疾患の部分症状とは言えないことを明らかにした。また歯科矯正治療上の問題となる精神障害について日歯心身に症例報告を行った。3.治療アルゴリズムの構築: 昨年度はSSRIやSNRIより三環系抗うつ薬が有効な症例も相当数で認められた結果が得られたことを踏まえ、三環系抗うつ薬の有用性と限界からdopamine partial agonist(DPA)の可能性を検討し、さらに最適な治療アルゴリズムの構築を目指している。4.脳機能画像研究:本年度は咬合異常感(phantom bite)を対象に9mTc-ECD によるSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射型コンピュータ断層撮影)をもちいた脳機能画像研究を施行した。その結果、本症患者では側頭葉を中心にレンズ核など広汎な脳領域における局所脳血流量の左右差があることを明らかにし、国内外の学会にて発表し、投稿準備中である。
2: おおむね順調に進展している
歯科心身症の疫学的研究は比較的順調に進んでいる。本年度は特に咬合にまつわる心身医学的問題に重点を置き、臨床的に有意義な症例報告が雑誌掲載されるなどの成果も上がっている。しかし、口腔セネストパチーの脳機能画像研究の続報や咬合異常感(Phantom Bite)の脳機能画像研究が予定よりわずかに遅滞した。以上よりおおむね順調に進展していると判断した。
本学の症例数の豊富さを活かし、充実した歯科心身症患者の臨床的データベースが構築されつつある。前向き研究の前提となる臨床疫学的研究を推進し、レトロスぺクティブな舌痛症や非定型歯痛など治療反応性の予測因子を検討していきたい。さらにはそれらを基にした歯科心身症の診断基準や治療アルゴリズムを構築していきたい。咬合異常感(Phantom Bite)は歯科に特有の「咬合」にまつわる重要な問題を包含しているため、脳機能画像研究にNIRSなども加えて、さらに病態の本質に迫るような研究を目指したい。
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