研究課題/領域番号 |
24593145
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
八木 稔 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50157963)
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キーワード | 乳歯う蝕 / う蝕予防 / フッ化物歯面塗布 / 歯科保健行動 |
研究概要 |
う蝕減少期の現在,地域における小児のデータに基づいてフッ化物歯面塗布という要因を含む乳歯う蝕の予防について再評価することとした。対象は,2004年度から2009年度の間に新潟県の一自治体において出生した小児(1,324人)であり,このデータに基づいて,1歳,1歳6か月および3歳それぞれの時点において,保護者への聞き取りによって得られた歯科保健行動と3歳児のう蝕有病状況との関連を調べた。まずフッ化物歯面塗布の回数と3歳児乳歯う蝕歯数との関連を求めた。つぎに,乳歯う蝕有病の有無と乳歯う蝕に関わる歯科保健行動との関連を求めた。 フッ化物歯面塗布の回数とう蝕有病の有無との間には,統計的に有意な関連は示されなかった。フッ化物歯面塗布の回数とう蝕有病状況との関連が示されなかった理由の一つは,この度の対象者にはう蝕なしが多くを占め,そのほとんどがフッ化物歯面塗布を受け,しかもその回数が多い傾向にあったために,う蝕予防効果が明瞭に示されなかったというところにあると考えた。 フッ化物歯面塗布の回数と仕上げ磨きの習慣との間には統計的に有意な関連が示された。つまり,仕上げ磨きを継続的に行っている保護者は,他の保健行動も良好であり,フッ化物歯面塗布を比較的多く受けさせる傾向にあることが示唆された。う蝕有病の有無と統計的に有意な関連を示した歯科保健行動は,従来から指摘されていたものと同様であった。ただ,どの歯科保健行動においても,う蝕有病率の差が低かったため,行動変容によるさらに大きなう蝕の減少を期待するには,さらに工夫が必要であろうと考えた。最近では,乳歯う蝕予防におけるフッ化物配合歯磨剤の効果が注目されており,今後は,フッ化物歯面塗布およびフッ化物配合歯磨剤を含むフッ化物の多重応用を含む新たな指導プログラムの構築について検討する必要があると考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「前期(1歳から3歳)-乳歯う蝕予防」については、国内学会(第54回日本歯科医療管理学会総会・学術大会、日本歯科衛生学会 第8回学術大会)および国際学会(10th IADR World Congress on Preventive Dentistr)において成果を発表し、また、第62回日本口腔衛生学会において本研究に基づく「新たな時代の乳歯う蝕のリスク評価と歯科保健プログラムの開発-再考・乳歯う蝕予防-」と題した自由集会を行い研究の総括を行ったが、「後期(3歳以降就学前)-乳歯う蝕予防」については、今年度までにデータファイルの作成を終えたばかりであるため。
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今後の研究の推進方策 |
「後期(3歳以降就学前)-乳歯う蝕予防」については、データファイルの作成を終えたので、速やかに解析を行い、国内学会(第23回日本健康教育学会学術大会)および国際学会(The 11th International Conference of Asian Academy of Preventive Dentistry)において成果を発表する予定である。また、「前期(1歳から3歳)-乳歯う蝕予防」および「後期(3歳以降就学前)-乳歯う蝕予防」の成果をまとめて論文投稿を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文投稿に至らなかったため、その分の投稿料が執行できなかった。 残された課題に関連したデータの解析を行い、その成果について国内外の学会において発表し、全ての成果について論文にまとめて学術誌に投稿する。
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