研究課題/領域番号 |
24593159
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川下 由美子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10304958)
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研究分担者 |
齋藤 俊行 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10170515)
梅田 正博 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60301280)
吉冨 泉 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (90363457)
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キーワード | 頭頚部がん / 放射線治療 / 口腔粘膜炎 / 口腔管理 / 口腔ケア |
研究概要 |
頭頸部への放射線治療によってほぼ100%口腔粘膜炎が発症するが、放射線治療中の口腔管理の方法は確立されておらず(Helen V Worthingtonら Cochrane Database of Systematic Reviews 2011、A. Rodriguez-Caballeroら Int J Oral Maxillofac.Surg 2012; 41:225-238)放射線治療中の口腔ケアが推奨されているにすぎない。 本研究の目的は、頭頸部がんで放射線治療を受ける患者に対して放射線治療開始前から口腔管理を行い、予定通りの放射線治療を完遂させ放射線治療による有害事象の口腔粘膜炎を予防あるいは重症化を抑制するかを検討することである。本研究における放射線治療中の口腔管理の方法は、①口腔ケア ②スペーサー作成 ③ピロカルピン塩酸塩の投与 ④口腔粘膜炎へのステロイド軟膏塗布である。 放射線科や耳鼻科からほぼ全例頭頸部がんで放射線治療を受ける患者の紹介を受け、平成23年10月から平成25年3月まで78名の患者への口腔管理を行ってきた。その中でも特に30名の口腔・中咽頭がんの患者に注目し、口腔ケアの効果を評価した。その結果、重度の口腔粘膜炎を発症した割合は17%(30名中5名)であった。Nicolaou-Galitisら(The open cancer Journal,2011,4,7-17)の報告では、放射線治療中に口腔ケアみを行ったところ135名の頭頸部がんで放射線治療を受け重度の口腔粘膜炎を発症した割合は57%であった。 本研究の結果から放射線治療中に口腔管理を行うことで重度の口腔粘膜炎の発症を抑制できることが示唆され、論文発表した(Kawashitaら Journal of Cancer Research & Therapy, 2(1): 9-13, 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30名の口腔・中咽頭のがん患者に放射線治療中の口腔管理を行うことで重度の口腔粘膜炎の発症率抑制することが示唆され、この結果を2013年の頭頸部癌学会で報告し、さらには論文報告(Kawashitaら Journal of Cancer Research & Therapy, 2(1): 9-13, 2014)した。また、本研究分担者である梅田正博が編著となり、「周術期口腔機能管理の基本がわかる本」(2013年12月、クインテッセンス出版株式会社)を執筆した。その一部である「頭頸部がん放射線治療と口腔管理」を分担執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
頭頸部に放射線治療を受ける患者への口腔管理の効果を論文報告(Kawashitaら Journal of Cancer Research & Therapy, 2(1): 9-13, 2014)した。当初、本研究のコントロールを放射線治療中の口腔管理の介入前の平成23年9月から1年前にさかのぼり口腔・中咽頭のがん患者で放射線治療を受けかつ歯科受診を受けていない者27名とした。ところが、コントロールに選んだ患者の口腔粘膜炎の評価は複数の担当医によって行われており評価基準が整っていなかったためにコントロール群としての口腔粘膜炎の重症度を評価することができなかった。そこで今度は、口腔外科で口腔癌の診断を受け、放射線治療を受ける患者を対象にして口腔管理群と口腔ケアのみのコントロール群にランダムに割り付け、長崎大学病院のみの症例では限られているので多施設共同研究ランダム化比較試験を開始するに至った。 本研究における口腔粘膜炎の評価はNCI-CTCAE v4.0とv3.0の評価方法に基づいている。v4.0は患者の自覚所見による機能評価(疼痛と摂食状況)をもとにしているため、十分な疼痛コントロールがなされていれば実際の重症度よりも軽症に判断される。さらに口腔癌では術後に経管栄養が行われていることもあり、さらに判定が困難になることもある。そこで他覚所見に基づく判定であるv3.0も用いているが、v3.0でも診査者によって評価にばらつきが出ていることが分かった。そこで口腔癌の担当医ならびに口腔管理を行う歯科医師10名を対象にして、110枚の口腔粘膜炎の写真を用いてv3.0でばらつきが出やすいGrade 2と3の基準についてすり合わせを行った。すり合わせをすることでGrade判定における一致度がすり合わせ前後で0.59から0.91に改善できた。この結果を多施設共同ランダム化比較試験に生かし診査者間での口腔粘膜炎の評価ばらつきをできるだけ抑えことに役立てている。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度内に購入予定していたWindows 8のパーソナルコンピュター(PC)の生産が追い付かず納期が遅れるとのことで、PCとそれに見合うソフトの費用が次年度使用額として生じた。 統計解析ソフトをインストールできるハイスペックのWindows 8のPCならびにそれに見合うソフト(情報管理ソフト、論文管理ソフト)をすでに購入している。
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