2012 年度実施状況報告書

ＨＩＶ感染者を対象とした口腔癌の早期発見と予防に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号	24593162
研究種目	基盤研究(C)
研究機関	横浜市立大学
研究代表者	筑丸寛横浜市立大学, 医学部, 助教 (80217231)
研究分担者	上田敦久横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (60295483) 光藤健司横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70303641)
研究期間 (年度)	2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード	癌 / がんスクリーニング / HIV
研究概要	本研究では悪性腫瘍として口腔癌を取り上げ、実際にHIV感染者を対象とした口腔がんスクリーニングを行い、口腔癌の罹患率、口腔の前癌病変、前癌状態の罹患率、口腔癌のリスク要因を明らかにする。また、HIV感染者の口腔癌のスクリーニング体制を整備することも本研究の目的とする。平成24年度はパイロット調査とし、代表者の所属する施設で研究を開始した。対象は横浜市立大学附属病院でHIV感染症の管理を受けているHIV感染者とした。準備：a.案内パンフレットの作成、b.スクリーニングプロトコール、c.調査票を作成した。案内、説明と同意、対象者リスト登録：a.内科担当医から対象者に対して本研究の案内をし、スクリーニング受診希望者を口腔外科担当医へ連絡し受診させた。b.連絡を受けた口腔外科担当医は本研究の趣旨、具体的内容についで説明し同意を得、対象者リストに登録した。口腔がんスクリーニングの実施：a.対象者に「口腔がん検診問診票」の記載を依頼した。b.口腔外科担当医による口腔がんスクリーニングを実施した。c.口腔前癌状態の疑いがある対象者は同意を得て病理組織検査などで確定診断を得た。スクリーニング結果、調査票の登録：a.口腔外科担当医は上記口腔癌スクリーニングの a. b. cの結果をデータベースに登録した。平成25年3月31日までに39名のHIV感染者が本研究に参加し、全員スクリーニングが終了し調査票の登録が終了している。このうち1名は顎下部腫瘤を認めたため、CTによる画像検査を行ったが悪性腫瘍を疑う所見は得られなかった。また、別の1名は下顎歯肉に白斑が見られたため病理組織検査を行ったが悪性腫瘍、前癌病変を疑う所見は得られなかった。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している理由準備に関しては a.口腔癌一般、HIV感染者の癌治療の問題点、口腔がんスクリーニングの意義を記載した案内パンフレット、bスクリーニングの際のチェック項目を記載したプロトコール、c.HIV感染の状態、他の感染症の状態、その他、生活習慣に関する調査票の作成はすべて終了している。口腔癌スクリーニングはすでに開始されており平成24年度末には39名のHIV感染者が研究に参加している。これらの参加者に関して対象者リストへの登録、スクリーニングの実施、結果の登録が終了している。研究参加者数はまだ少ないが、順調な増加傾向が見られ、今後の増加が見込まれる。データベースへの登録も順調で参加者全員の登録が完了している。以上から研究体制はほぼ確立され、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後の研究の推進方策	平成25年度の研究は平成24年度のパイロット調査の方法に準じて研究を続行し、また施設数も増やし、対象者数の増加を図る。神奈川県、東京都の2施設を追加する予定である。今後、当該施設への倫理申請、関係者との調整を進めていく。口腔癌スクリーニングにはVelscopeを導入して診査の精度、客観性を高める。構築されたデータベースを用いて集計、解析を行っていく。集計から、口腔癌および前癌病変、前癌状態の罹患率、視診を基本とした口腔がん検診の感度、特異度を算出する。口腔癌罹患のリスク要因の検討もこのデータベースを用いてロジスティック回帰分析によって行っていく。この際の対象としてはHIV非感染者の口腔がん検診の結果を用いる。現在神奈川県歯科医師会で口腔がん検診を行っている関係者との調整を進めている。
次年度の研究費の使用計画	24年度内に口腔がん検診の精度、客観性の向上のためにVelscopeを導入予定であったが。輸入手続きに時間がかかったため、納品できず、繰越金が発生した。これについては25年度早々に納品される予定である。またVelscopeの消耗品も25年早々の納品となる。研究参加者数の増加を図るために実施施設の増加を図る、これに関する関係者との打ち合わせ費用が必要となる。また、解析の際の対照群となるHIV非感染者の口腔がん検診の関係者との打ち合わせ費用も必要となる。結果解析のための統計ソフトにかかわる費用、コンピューター関連の費用も必要となる。さらに、研究成果発表のための学会参加費用、旅費なども必要となる。