研究概要 |
今年度は、様々な年齢と歯周病の進行度の異なる患者の唾液のメタボローム解析を実施し、網羅的に定量し代謝物の変化を調べた。 1. 唾液中グリシンとプロリンは年齢と歯周病に非依存的に一定の比率を示すか否か検討した。その結果、1)計144物質の定量を行い、加齢においては40歳を境目に有意に濃度の高くなる代謝物が多く存在し、歯周病とともに酸化ストレス関係の物質の上昇を確認した。2)31の代謝産物と6種類のアミノ酸が、歯周病の進行と共に増加した。乳酸と糖分解の最終産物が歯周病の進行と共に上昇した。3)相関値R2>0.8のネットワークで、21の代謝産物と2つの代謝産物の2つのセットの集団が示された。 Aspartic acid、 Glutamic acidなどの13種類のアミノ酸が相関を示した。Glycineは、 Proline と同様にOrnithine, Putrescine, N-Acetyputresine, Lysineと相関を示し(R2>0.7)、一方 Proline は Glycineとのみ相関を示した。4)全代謝物でお互いに相関をとると、多くのアミノ酸がR2>0.7で高い相関を示し、加齢に伴い唾液中の ProとGlyの濃度比は、被験者によらず一定値 (0.63:1)を示した。これは、年齢や歯周病にも関係なく一定で、特に高齢者では高血圧やうつ病、また、それに伴う治療薬の影響もなく一定であることが分かった。Hypは、Proの100分の1の濃度であった。AspとGluの間にも、高い相関が得られた。Pro/Gly比は、口腔内または唾液腺の状態を反映する指標になる可能性があることが示唆された。歯周病及び老化マーカーは、重複する可能性があり、それぞれのマーカーが特異的であるか否かは不明でありさらに検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、様々な年齢と歯周病の進行度の異なる患者から、唾液を採取しメタボローム解析を実施し、網羅的に定量し代謝物の変化を調べた。その結果から、病態(疾患程度、年代別)との間の老化及び歯周病マーカーになりえる物質の探索・評価後、統計学的解析を実施し検討した。学会発表:1)唾液中グリシンとプロリンは年齢と歯周病に非依存的に一定の比率を示す(田中庄二 、秋田 紗世、片山 直、坂上 宏 、杉本昌弘.第55回歯科基礎医学会学術大会・総会、 2013年9月22日、2013.)その結果、全代謝物でお互いに相関をとると、多くのアミノ酸がR2>0.7で高い相関を示した。この中でも特徴的なのは、プロリンが常にグリシンの0.63倍で一定の比率にあることが分かった。これは、年齢や歯周病にも関係なく一定で、この一定の比率をとる原因の同定には更なる追求が必要であり、また、どのような状況で破綻するかを調べる必要があるが、この比率は口腔内または唾液腺の状態を反映する指標になる可能性がある。 投稿論文: 1)検査診断学への展望 -臨床検査指計:測定とデータ判読のポイント-老化マーカーとしての唾液中グリシンおよびプロリンの動態.坂上 宏、田中庄二、杉本昌弘. 第62回日本医学検査学会記念誌、696-699,2013. 2) Hiroshi Sakagami,Masahiro Sugimoto,Shoji Tanaka, Hiromi Onuma, Sana Ota, Miku Kaneko,Tomoyoshi Soga, Masaru Tomita. Metabolomic profiling of sodium fluoride-induced cytotoxicity in an oral squamous cell carcinoma cell line. Metabolomics DOI 10.1007/s11306-013-0576-z,2013. おおむね順調に進展していると考える。
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