研究概要 |
【対象と方法】24年度は若年男女23名(男性13名、女性10名)を対象に、温度・形状の異なるテストピースを用いて、それぞれ口腔で大きさを同定する能力を測定し、立体識別能力が温度、形状の影響をどのように受けるかを男女別に検討した。実験に用いたピースは歯科用即時重合レジンを用いて、円柱状のものを7種類(高さ5mm,直径11,12,13,14,15,16,17mm)、直方体のものを7種類(高さ5mm,1辺11,12,13,14,15,16,17mm)作成した。温度はインキュベータで、5℃、36℃、65℃に保ったものを用意した。各10個ずつ用意したので、同日にまとめてデータを取ることが可能であった。【結果】女性の場合は、全体に過小評価する傾向があり、温度の上昇とともにそれがなくなり正解率が上がった。一方男性では温度の上昇とともに過小評価が少なくなった点は女性と同じであるが、常温が最も正解率が良かった。回答時間はどの温度でも女性のほうが短く、また男女ともに回答時間が短いほうが過小評価する傾向があった。形状の影響は認められなかった。 従来口腔内のサーマルスティムレーションでは冷刺激が効果的とされているが、冷刺激に敏感であるということは、必ずしも冷たいものの大きさをしっかり認識できるということを意味するわけではないことが示唆されている。冷たいものは過小評価しやすいということは、丸呑みや窒息のリスクにもつながる可能性がある。さらに回答時間が短い方が過小評価する傾向があるということは、口腔内にある程度とどめることで、大きさを理解していることが推察される。”安全にかつ味わう”ために、口の感覚という要因は欠かせないことが示唆されたことで、次年度以降はさらに物性による違いについて検討することとする。
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