本研究は口腔環境の健全化および疾患予防のために、薬剤や化学物質を用いず、新しいコンセプトである口腔「シンバイオティクス」と「バイオジェニクス」を構築するための基礎的研究を目的としている。 平成24-25年度には、プレバイオティクススクリーニングとして、12種類の糖について検討したところ、被験乳酸菌のすべては増殖したのに対し、う蝕原性菌のStreptococcus mutansと口腔カンジダ症の原因真菌Candida albicansは、3種類の糖の糖資化性を欠くことが示され、より有効なプレバイオティクスとなる可能性が示唆された。また、プロバイオティクス候補乳酸菌のスクリーニングでは、う蝕原因菌、口腔カンジダ菌、および歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalisに共通に有効な株は5株であった。その中でもっとも歯周病原菌に有効な2株の培養上清中の有効成分の特定を、液体カラムクロマトグラフィー法を用いて試みた。その結果、1株は乳酸による抗菌活性である可能性が高く、もう1株は乳酸に依存しない成分であることが示唆された。 平成26年度は以下のような実績が得られた。 24-25年度のスクリーニングで選ばれた乳酸菌候補株について、真菌であるカンジダに対する抑制効果を有する株は、Streptococcus mutansの不溶性グルカン産生抑制効果があるか検討したところ、4株が特に高い阻止効果を発揮していることが示された。 また、25年度に歯周病菌に対し抑制効果を持つ菌株の培養上清成分をゲル濾過カラムクロマトグラフィーおよびHPLCで分画し、得られた抗菌活性分画の特性解析を詳細に行った。LC-MSで分子量を確定し、分子組成を推定したところ、ペプチドではなく新規物質である可能性が示唆された。
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