研究課題/領域番号 |
24593176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
武内 博朗 鶴見大学, 歯学部, 臨床教授 (50572260)
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研究分担者 |
泉福 英信 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (20250186)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (90350587)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔保健 / デンタルプラーク / 細菌 / グラム陰性菌 / グラム陽性菌 / LPS / FISH / Porphyromonas gingivalis |
研究概要 |
血管病変の形成には、生活習慣病に加えて菌血症が関与しており、その予防は健康寿命延長のために重要である。歯周疾患や根尖病巣を経由した歯原性菌血症が、多くの血管疾患の形成に大きな影響を及ぼしていると考えられる。 今年度我々は、蛍光insituハイブリダイゼーション(FISH: fluorescence in situ hybridization)を用い、血流感染症が口腔バイオフィルムを侵入門戸とする可能性について検討し、口腔内の菌叢変化と実際のバイオフィルム形成過程の機序解明を試みた。 実験は次の3つの項目について行なった。1.咽頭日和見菌検査陽性者の歯面バイオフィルムを対象に、その中の緑膿菌存否、局在を検討した。本菌プローブを用いてFISHで解析を行なった。2.根尖病巣組織内における Porphyromonas gingivalis.菌の存否と局在(組織中バイオフィルムの形成の有無)等につき、FISHで解析を行なった。3.歯周観血処置前後の末梢血液の採血を行い、菌血症細菌の同定と炎症性サイトカインを比較した。 その結果、生体内組織や口腔バイオフィルム中に、P. gingivalis菌や緑膿菌の増殖が認められ、病巣組織中での定着が示唆された。またスケーリング時にα-streptococcus、グラム陽性桿菌、球菌の血管内への侵入が確認された。 今回の結果は、FISHが口腔バイオフィルムの菌叢変化を形態的・直接的に捉える手段として、有効な病原菌除菌法や菌置換療法の効果を判定する指標となり得ることを示している。本研究により根源的な疾患リスクに対する予防歯科的制御法が確立すれば、口腔疾患のみならず、全身的疾患リスクそのものを低減できる。結果として我が国の国民健康づくりに直結した成果が現実的に大いに期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デンタルプラークの細菌を詳細に分析するFISHの条件設定に成功した。これによりPorphyromonas gingivalisのデンタルプラークあるいは歯根嚢胞内での棲息部位を正確に把握する技術を得た。コントロールとして用いたFISHのユニバーサルプラーマーも設計通りに機能した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、口腔バイオフィルム細菌による血流感染と慢性炎症形成の機序をFISH解析によって調査すると同時に、う蝕・歯周病原生バイオフィルムの除菌前後におけるFISH解析を行い、除菌前後におけるバイオフィルムの菌叢変化の様子を形態的・直接的に捉え、病原性バイオフォルムが良質な菌叢に変化する機序を解明する。同時に、病原性バイオフィルムを3DSなどの除菌法によって除菌し、歯原性菌血症が克服できるか否かを検証する。 研究成果は適宜学会にて発表し、海外英文論文に投稿する。エビデンスを構築した後、各地域の診療所外来などで改良された除菌治療法とその効果、評価を広く応用する。研究代表者らは、口腔の直接的な健康維持に直結する本研究成果を、自治体の衛生行政や歯科医師会などの広報を通じて広く発信するチャンネルを有している。 病原性ヒト口腔バイオフィルムが除菌によって、その菌叢が改善する過程における、その構成菌種や形態の推移を捉えた研究は乏しく、そのメカニズム解明は、国民病とも言われる血管疾患ならびに各種代謝生疾患の引き金となりうる歯周病などを制圧し、より専門的な除菌技術を開発し、口腔保健を達成するために急務である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は直接経費として主に物品費を使用する。
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