研究課題/領域番号 |
24593176
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
武内 博朗 鶴見大学, 歯学部, 臨床教授 (50572260)
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研究分担者 |
泉福 英信 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (20250186)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (90350587)
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キーワード | 口腔保健 / デンタルプラーク / 細菌 / グラム陰性菌 / グラム陽性菌 / LPS / 抗LPS抗体 |
研究概要 |
これまで我々は、蛍光insituハイブリダイゼーション(FISH: fluorescence in situ hybridization)を用い、血流感染症が口腔バイオフィルムを侵入門戸とする可能性について検討し、口腔内の菌叢変化と実際のバイオフィルム形成過程の機序解明を以下の3つの項目について行なった。1.咽頭日和見菌検査陽性者の歯面バイオフィルムを対象に、その中の緑膿菌存否、局在を検討した。本菌プローブを用いてFISHで解析を行なった。2.根尖病巣組織内における Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis)の存否と局在(組織中バイオフィルムの形成の有無)等につき、FISHで解析を行なった。3.歯周観血処置前後の末梢血液の採血を行ない、菌血症細菌の同定と炎症性サイトカインを比較した。 その結果、生体内組織や口腔バイオフィルム中に、P. gingivalisや緑膿菌の増殖が認められ、病巣組織中での定着が確認され、またスケーリング時にα-streptococcus、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌の血管内への侵入が確認された。 本研究により根源的な疾患リスクに対する予防歯科的制御法が確立すれば、口腔疾患のみならず、全身的疾患リスクそのものを低減できる。結果として我が国の国民健康づくりに直結した成果が現実的に大いに期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前回デンタルプラークの細菌を詳細に分析するFISHの条件設定に成功した。これによりP. gingivalisのデンタルプラーク、あるいは歯根膿胞内での棲息部位を正確に把握する技術を得た。コントロールとして用いたFISHのユニバーサルプラーマーも設計通りに機能した。 重度歯周炎患者の除菌処置によりPCRによる歯周病菌定量、インピーダンス法による細菌カウント、歯周組織検査結果などから、歯周病菌が著しく減少した一方で、口腔常在性のグラム陽性連鎖球菌が増加していることが確認された。 患者由来バイオフィルム中のLPSは、抗LPS抗体を用いたELISA の系で定量可能であった。除菌前では内毒素量が多く、除菌後では少ない傾向を示した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の結果を踏まえ、平成26年度より、重度歯周病と診断された患者に除菌処置を伴う歯周治療を行い、その前後における臨床データおよび、バイオフィルム中の内毒素LPS-A,LPS-B の含有量を定量評価している。歯周病菌のPCR検査(P.g.菌、P.i.菌、T.f.菌について菌数・菌比率)、 細菌カウンター値、ポケット%、BOP値について検査を行なった。歯肉縁下を含む全顎バイオフィルムを超音波ディプラーキングして生理食塩水にて回収し-20℃にてストックサンプルとした。その後、凍結乾燥してサンプルとした。被験者に対する除菌処置は1)歯周治療、ハンドクリーニング、およびSRP、2)3DSを用い抗生物質ペーストを歯周組織に輸送した。除菌前後のバイオフィルムサンプルについてLPS定量アッセイを実施し(抗LPS-A抗体および抗LPS-B抗体にてドットプロット)、抗LPS-A,抗LPS-Bの含有量と病態の関係を解析している。 研究成果は適宜学会にて発表し、海外英文論文に投稿する。エビデンスを構築した後、各地域の診療所外来などで改良された除菌治療法とその効果、評価を広く応用する。武内らは、口腔の直接的な健康維持に直結する本研究成果を、自治体の衛生行政や歯科医師会などの広報を通じて広く発信するチャンネルを有している。 病原性ヒト口腔バイオフィルムが除菌によって、その菌叢が改善する過程における、その構成菌種や形態の推移を捉えた研究は乏しく、そのメカニズム解明は、国民病とも言われる血管疾患ならびに各種代謝生疾患の引き金となりうる歯周病などを制圧し、より専門的な除菌技術を開発し、口腔保健を達成するために急務である。
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