研究課題
1.口腔内付着物の病理学的特徴の解明:全例でサイトケラチン1陽性の好酸性層状構造物が認められたので、口腔粘膜の重層扁平上皮由来の剥離上皮膜と診断した。さらに一部にPAS染色陽性のヘマトキシリンに濃染した無構造の物質がみられ、唾液由来のタンパク質であるムチンと判断した。痰や痂皮と異なり、角質変性物が80%以上を占め、ムチンは20%未満で、炎症性細胞の散在や、局所的にグラム陽性球菌の群集化がみられた。2.口腔内付着物の形成要因:口腔内付着物(剥離上皮膜)の形成条件は「非経口摂取」であり、経口摂取者には、剥離上皮膜がみられなかった。2番目の形成要因は、舌背乾燥や開口などの口腔乾燥所見が関与していた。舌下粘膜の保湿度と関連がなかったので、唾液分泌量に依存しない蒸発性の口腔粘膜の乾燥の所見であることが示唆された。3.剥離上皮膜と各種肺炎起炎菌の検出状況の検討:調査対象者から緑膿菌が44.4%、β溶連菌が22.2%、肺炎桿菌が22.2%、Serratia marcescensが22.2%の者にみられたが、剥離上皮膜を有する者とそうでないもので各細菌の検出率は、有意差がみられなかった。また剥離上皮膜の除去によっても除去する前と比較して有意差がみられなかった。4.剥離上皮膜の予防法:1日5回以上のリキッドタイプの保湿剤の噴霧は、ベースライン(介入前)時に剥離上被膜を形成していた者10名のうち、介入により5名(50%)が形成を認めず、介入により剥離上被膜の形成が有意に減少した。つまり保湿剤を使用する口腔ケアにより剥離上皮膜の形成を予防できることが示唆された。剥離上皮膜の除去により発語やSpO2の改善はみられなかった。これは調査対象者のSpO2が正常範囲であり、病態も慢性期であり、症状が固定化されていたためと考えられた。今後は、急性期を対象とすることで改善の結果が期待できると思われる。
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Gerodontology
巻: 31 ページ: 184-193
10.1111/ger.12020. Epub 2012 Nov 29.
老年歯科医学会雑誌
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