研究課題/領域番号 |
24593178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
加藤 一夫 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (60183266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔バイオフィルム / ジェット水流 / 抗菌剤 / 定量的評価 / プラークコントロール / 酸蝕象牙質 |
研究概要 |
本年度は、研究実施計画に従い、化学的プラークコントロールの効果促進に対するジェット水流の有効性の検討を行った。 インフォームドコンセントの得られた学生ボランティア(17名)を対象に印象採得を行い、歯科用金属製のバイオフィルム堆積装置を歯科技工所に外注し作製した。この装置に一対の健全なエナメル質小片(スラブ)を組み込み、咬合を妨げないようにクラスプを介して上顎大臼歯の頬側面に2日間装着し、その部位のブラッシングを避けることで、スラブ表面にバイオフィルムを堆積させた。装置を口腔から外し、スラブを口腔洗浄器(デントレックス、リコーエレメックス)で350kPaの洗浄圧で5秒間処理した。一方のスラブは0.2%クロルヘキシジン溶液(CHX)に、他方のスラブは対照として生理的食塩水に、30秒間浸漬した後、装置を再び口腔内に戻し、その2日後に回収した。 CHXへの曝露がバイオフィルムに与える影響を、その成長速度からみるために、スラブは直ちに凍結乾燥し、表面を白金でコート後、樹脂包埋し、スラブ中央部で切断した。その断面を電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて反射電子像を撮影した。現在その画像からスラブ上のバイオフィルム厚さを解析中である。 また、このEPMAを利用した解析方法の新たな展開として、酸蝕象牙質の磨耗量の定量的評価に対する有用性も検討した。中央部にウインドウを作製した象牙質ブロックをpHの異なる酸性飲料に浸漬し人工的に酸蝕させ、歯磨剤のスラリー(水:歯磨剤=4:1)または水を滴下した状態で、音波ブラシでウインドウ面を1分間処理した。ウインドウ断面部の反射電子像の画像解析により磨耗深さを計測したところ、、酸性飲料の種類による酸蝕象牙質のブラッシングによる磨耗の進行の違いと、歯磨剤使用の影響が限定的な可能性が示唆され、この定量的評価の有用性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年3月に所属講座の主任教授が、定年を迎える前に自己都合退職し、平成24年度に職務として行うべき教育活動や臨床での業務等が著しく増加した。そのため、計画調書作成時に想定した研究の実施等に必要となる時間の配分通りに、時間を確保し研究を遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①化学的プラークコントロールの効果促進に対するジェット水流の有効性の検討 ジェット水流による洗浄処理の後、新たに再生される口腔バイオフィルムを対象に、バイオマス容積やグルカンのプロファイルあるいは細菌の密度分布などから、ジェット水流による処理の下での試験薬剤への曝露がバイオフィルムに与える影響を継続して検討する。 ②口腔バイオフィルムの構造と細菌叢に及ぼすジェット水流の直接的効果の検討 ジェット水流に曝露した時の水の圧力や浸透圧の差による、菌体の破壊や基質成分の選択的な消失などバイオフィルムの受けるダメージや、バイオフィルムの薬剤浸透性や感受性の変化を、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)および共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)を用いて検討する。 ○EPMAによる観察方法の検討:ジェット水流の圧力と浸透圧の影響が最も強く保存される洗浄したバイオフィルムの表面を、二次電子像(SE像)で観察する。二次電子の発生効率が低く、SE像のコントラストが不足する場合や、菌体外基質などの被覆物が障害になり、破壊された菌体の確認が困難な場合に備え、イオンコートの前に、余分な基質を溶解・除去するための酵素処理や、オスミウムによる導電染色を追加するなどの対策を検討する。 ○CLSMによる観察方法の検討:洗浄した口腔バイオフィルムは十分に薄いため、CLSMで構築される3次元画像を用いて、特定の成分を定量的に評価できると予想される。自己蛍光を生じる恐れのない象牙質スラブ上のバイオフィルムを試料とし、適宜蛍光染色を使い分けることで、抗菌剤に対するバイオフィルムの浸透性や感受性をバイオフィルム内の生菌と死菌の分布から、バイオフィルムからの基質の除去効果を体外多糖類の分布から検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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