研究課題/領域番号 |
24593178
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
加藤 一夫 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (60183266)
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キーワード | 口腔バイオフィルム / バイオフィルム浸透性 / フッ化物停滞性 / 定量的評価 / 酸蝕象牙質 / 音波歯ブラシ |
研究概要 |
フッ化物とともにナトリウム、ホウ酸、アルミニウム、ケイ酸およびストロンチウムのイオンを徐放する特性を持つS-PRGフィラーを配合する歯磨剤から抽出された成分のバイオフィルム浸透性とフッ化物停滞性を検討するための試料採取を行った。インフォームドコンセントの得られた学生ボランティア(18名)を対象に印象採得を行い、歯科用金属製のバイオフィルム堆積装置を歯科技工所に外注し作製した。この装置に一対の健全なエナメル質小片(スラブ)を組み込み、咬合を妨げないようにクラスプを介して上顎大臼歯の頬側面に3日間装着し、その部位のブラッシングを避けることで、スラブ表面にバイオフィルムを堆積させた。S-PRGフィラー濾過液のバイオフィルムへの浸透性を評価するために、口腔外で濾過液に1分間浸漬後、口腔内に30分間留置してから回収した。フィラー未配合の歯磨剤の濾過液を作用させたものを対照群とした。この結果については、最終年度(H26)に解析を行う。 また、昨年度に実施した電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を利用した酸蝕象牙質の歯質消失量の定量的評価では、歯質消失に対するブラッシングや歯磨剤の影響が認められなかった。そこで、ブラッシングによる酸蝕象牙質の摩耗に関わる要因の影響を、消失歯質の量から再度検討した。中央部にウインドウを作製した象牙質ブロックを0.83M酢酸に浸漬し人工的に酸蝕させ、音波ブラシでウインドウ面を1分間処理した。毛先の形態(テーパー、ラウンド)、ブラッシング圧(100 g、200 g)およびスラリー粘度(CMC濃度0.5%または1%)の組合せで計8種類の試験を行った。分散分析により、音波歯ブラシによる酸蝕象牙質の摩耗に関わる要因の影響を検討したところ,歯ブラシの毛先の形態の影響は認められたが,歯磨剤の粘度やブラッシング圧については有意な影響は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度(H24)に、研究実施計画に従い、化学的プラークコントロールの効果促進に対するジェット水流の有効性の検討を行った。具体的には、0.2%クロルヘキシジン溶液(CHX)への曝露がバイオフィルムに与える影響をみるため、口腔内でバイオフィルムを堆積させた一対の健全なエナメル質小片(スラブ)を350kPaのジェット水流で5秒間洗浄処理した後、一方はCHX溶液に、他方は対照として生理的食塩水に浸漬し、再び口腔内でスラブ上にバイオフィルムを堆積させた。両者のバイオフィルムの成長速度の差をみるため、試料を凍結乾燥し、表面を白金でコート後、樹脂包埋し、バイオフィルム断面の反射電子像を撮影するところまでは終了しているが、まだその解析が完了していないため。
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今後の研究の推進方策 |
①化学的プラークコントロールの効果促進に対するジェット水流の有効性の検討 ジェット水流による洗浄処理の後、新たに再生される口腔バイオフィルムを対象に、バイオマス容積やグルカンのプロファイルあるいは細菌の密度分布などから、ジェット水流による処理の下での試験薬剤への曝露がバイオフィルムに与える影響を継続して検討する。 ②化学的プラークコントロールとして、フッ化物を他種イオンとを同時に作用させた場合の各成分のバイオフィルム浸透性とフッ化物停滞性の検討 バイオフィルム感染症のひとつであるう蝕は、継続的なフッ化物の応用下では、口腔清掃が不良であっても抑制効果が認められることから、口腔バイオフィルム中のフッ化物濃度の上昇による再石灰化の促進や細菌に対する抗酵素作用による酸産生の抑制が注目されている。局所応用によるフッ化物のバイオフィルムへの取り込みは一過性であるが、多種類のイオンを同時に作用させた場合のフッ化物停滞能についてはほとんど情報がない。そこで、フッ化物とともにナトリウム、ホウ酸、アルミニウム、ケイ酸およびストロンチウムのイオンを徐放する特性を有しているS-PRGフィラーを配合した歯磨剤から抽出された成分のバイオフィルム浸透性とフッ化物停滞性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
差額が少額のため支出できなかった。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画に変更はない。
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