先行研究から、医事紛争に至る最大の要因は、医療の質ではなく医療コミュニケーションであること、および、医療者間のコミュニケーションが治療結果に影響を及ぼすことが明らかになっている。このような知見の集積にも関わらず、わが国の歯科医療の分野では、他職種との連携(コミュニケーション)不良が一因と考えられる紛争事例が増加している。しかも、わが国での医療従事者間のコミュニケーション要因について十分な検討が行われていない。そこで、本研究の目的を、チーム医療に関するわが国の医事訴訟判例のデータベース化、および、解析作業によって1)医療従事者の法的責任に関連する医療従事者間のコミュニケーション要因を特定する。2)医科分野と歯科分野にけるコミュニケーション要因を比較し、歯科分野におけるチーム医療におけるコミュニケーションの特徴を明らかにすることとした。 研究の延長期間である平成27年度は、前年度に引き続き、医事訴訟判例の収集および分析を行った。前年度から、データ数については、積み重ねられてきたが、目標とする判例数の収集には到達していなかったために、期間の延長をして、判例数を増やすことができた。そして、多職種コミュニケーションが問題となった歯科および医科分野の医事訴訟判例について、医療従事者の法的責任に関連すると考えられる変数についてコード化を行い、全判決からなるデータベースの構築、分析を行った。今後は、まとめた成果について発表を予定している。
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