研究課題/領域番号 |
24593183
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター) |
研究代表者 |
鈴木 隆二 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 診断・治療研究室, 室長 (70373470)
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研究分担者 |
熊谷 賢一 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10518129)
濱田 良樹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70247336)
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キーワード | アマルガム / マーモセット / TCR / サイトカイン / MHC |
研究概要 |
本研究では、ヒトの歯科治療の使用するアマルガム含有水銀の生体内での影響を免疫学的に解析する事を目的としている。新世界サルであるコモン・マーモセット(Callithrix jacchus, 以下、マーモセット)をヒトの外挿モデルとして使用し実験計画を立案した。マーモセットはヒトとの遺伝子相同性が90%前後で、ヒト疾患の病態を良く反映し、様々な化合物や生理活性物質の薬効・体内動態・代謝または安全性の対して有用な実験動物である。更には繁殖力が高く、小型で取り扱いや飼育が容易である。ヒトの口腔内環境に関しても類似性は高く歯科領域における動物モデルとしても近年注目を集めている。本研究で立案し得られた研究成果を通してアマルガム含有水銀の生体内での影響を免疫学的な検証を行う事で、安全な歯科治療の確立へ寄与する事を目的としている。24年度までに上記の研究目的の遂行の為に、マーモセットの免疫学的解析ツールの確立として①定量的PCR測定系の確立を行った。CD抗原(CD3ε,CD4, CD8α,CD20)、サイトカイン(IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-10, IL-12β, IL-13, IFNγ, TNFα)の測定を可能した。また、T細胞の機能の本体であるTCR遺伝子の網羅的解析系の確立にも成功した。25年度は、マーモセットのMHC classIの遺伝子を決定した。この成果により、マーモセットにおけるT細胞の抗原特異的な反応をヒトと同程度に解析を行う事が可能になった。平成26年度には上記の成果に加えて、マーモセットのMHC classIIの遺伝子を決定し、免疫学的解析ツール確立を完璧にして、マーモセットの歯牙にアマルガムを充填させる実験系を行い、ヒトの充填状態と同様な状態を提示するモデル系の作成を行い、水銀による免疫学的影響を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) ①マーモセットのTCRレパトア解析系の確立:マーモセットにおける網羅的TCR解析系の確立に成功した。 ②マーモセットの各種サイトカイン測定系の確率:マーモセットの各種サイトカインの定量的測定系として、リアルタイムPCR系の確立に成功した。測定可能なサイトカインとしては、IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-10, IL-12β, IL-13, IFNγ, TNFα。 ③マーモセットのCD抗原系の定量的検出系の確立:マーモセットの各種CD抗原系の定量的測定系としてリアルタイムPCR系の確立に成功した。測定可能なCD抗原系として、CD3ε,CD4, CD8α,CD20。 ④マーモセットの主用組織適応抗原系(MHC)クラスIの同定:マーモセットのMHC classIの同定を決定した。日本国内でマーモセットを供給販売している日本クレアから50頭分の血液から採取したRNAを用いて次世代シーケンシング技術により検定し、MHA classIハプロタイピングを可能とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度迄に、マーモセットの免疫学的解析ツールの確立が予定どおりに進捗している。 来年度は、マーモセットのMHC classIIの発現解析を行い、遺伝子の同定とハプロタイピングを行う。これにより、免疫系に関連するMHCのハプロタイピングが可能となり、前年度までに確立したサイトカインおよびCD抗原の定量的発現解析、網羅的TCR解析を以って、本研究課題を行う事が可能となった。本年度は、マーモセットを用いた歯牙へのアマルガム充填に関しては、充填後の評価を経時的に行う。検討項目としては体温・活動性評価・皮膚検査・一般血液検査・肝機能・腎機能と血中および尿中の水銀濃度測定、更には自己抗体産生評価を行う。細胞免疫額的解析として、①末梢血T細胞を用いたFACSによるT細胞亜群解析、さらに制御性T細胞の変化を検討・評価する。②T細胞機能の検討としては、前年度までに確立した網羅的TCRレパトア解析系、および定量的PCR系を用いて行いコントロール群と比較する。 本研究では、マーモセットの歯牙にアマルガムを充填させることで、ヒトの充填状態と同様な症状を示すモデル系の作成とその評価が目的である。マーモセットにアマルガムを充填するモデル作成に関しては、歯牙の解剖学的知識の集積を今後も継続して行う。既に、免疫学的解析ツールの確立は予想以上の速度で達成されている。本年度は、昨年度までに未使用な頭数を加算して8頭で使用する予定である。 その他の実験試薬消耗品(遺伝子解析関連試薬、免疫生化学関連試薬、実験消耗品関連)については申請計画に変更はない。また、旅費など(国内旅費、謝金、その他)に関しては当初予定研究費の変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
初期予定したマーモセットの使用予定数6頭から4頭の導入で行った。マーモセットの1頭あたりの単価は約2500千円~3000千円である。動物愛護の観点からも、実際にアマルガムを充填する実験系にN数を増加して統計解析可能な実験頭数として使用する事を考慮した。 本年度に、前年度分を動物費用として使用を予定している。マーモセット2頭分で充足できる。
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