研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒトう蝕歯に対する治療に使用されるアマルガム含有水銀(以下、アマルガム)の生体に対する免疫学的影響を解析する事である。新世界ザルであるコモン・マーモセット(Callithrix jacchus: 以下、マーモセット)をヒトの外挿モデルとして実験を立案した。マーモセットはヒトの遺伝子と90%程度の相同性を有し、ヒト疾患の病態を良く反映する事が知られ、様々な化合物や生理活性物質の薬効・体内動態・代謝または安全性評価系に対して有益な実験動物である。更には繁殖力が高く、小型で取り扱いや使用が容易である。さらに、ヒト口腔内環境に関しても類似性が高く歯科領域における動物モデルとして近年注目されている。本研究で得られた研究成果を通してアマルガムのマーモッセトにおける生体内での免疫学的検証を行う事で安全な歯科医療の確立への寄与を目的としている。平成24年度・平成25年までに上記の目的を達成する為に、マーモセットの免疫学的解析ツールの確立を行ってきた。①CD抗原(CD3ε,CD4,CD8)、サイトカイン(IL-1β,Il-2,Il-4,IL-5,IL-6,IL-10,IL12β,IL-13,IFNγ,TNFα)の定量的PCR系の確立、②TCR遺伝子の同定とTCRレパトア解析系の確立、さらには、マーモッセトのMHC classⅠ遺伝子の同定を行った。平成26年度には、マーモセットのMHC classⅡ遺伝子の同定のためにマーモセットの末梢血と筋肉組織からRNAを抽出しエマルジョンPCRの産物を時次世代シーケンシングで遺伝子解析を行い、幾つかのマーモッセトMHC classⅡ遺伝子の単離を継続して行っている。また、アマルガム充填モデル系の確立を行うために、マーモセット死体を用いた系の確立も継続中である。
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