本研究の目的は、看護学教員のFD支援に向けて看護学の講義における教授活動自己点検・評価システムを開発し、その普及に向けてシステムの有効性を検証することである。この目的に向けて平成27年度は、第1に、平成26年度に収集したデータを用いて、教員特性の相違による教授活動の質の特徴を明らかにした。対象は、無作為抽出した看護基礎教育機関116校の教員1373名であり、測定用具に教授活動自己評価尺度-看護学講義用-および看護教員特性調査紙を用い、有効回答574部を分析した。その結果、看護学の講義における教授活動の質に有意な関係のあった特性は、34変数中19変数であった。19変数とは、大学の教授・准教授である、大学院で看護教育学や教育学を受講している、講義内容を十分に学習し、系統的に自己の講義を評価して改善している、同僚や学生と日常的にコミュニケーションをとっている、学会に参加している、論文を抄読している等であった。看護学の講義における教授活動の質向上に向けて、教授活動に関する基本的な学習に加えて客観的な自己評価活動に基づき授業を改善する重要性が示唆された。 第2に、看護学の講義を担当している教員4名を対象に教授活動自己評価尺度-看護学講義用-を用いた講義の自己評価を依頼し、半構成的面接法により、看護学の講義における教授活動自己点検・評価システムの効果を検証した。その結果、教員4名が全員、「尺度使用による自己の教授活動の傾向把握」「教授活動改善の方向性発見」「客観的指標を用いた自己評価の重要性実感」をしており、看護学の講義における教授活動自己点検・評価システムの効果が示唆された。 第3に、システムの普及に向けて、教授活動自己評価尺度-看護学講義用-を書籍に公表した。
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