研究課題/領域番号 |
24593201
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
大川 百合子 宮崎大学, 医学部, 准教授 (60270055)
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研究分担者 |
深井 喜代子 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (70104809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 看護技術 / フェイスマッサージ |
研究概要 |
フェイスマッサージの先行研究を概観すると,マッサージの方法の記載は散見されるのみだった。一般に,フェイスマッサージは軽擦と押圧で実施されるが,どのくらいの圧で行うかは明確ではない。フェイスマッサージは,その方法が不明瞭で,生理的・心理的効果も十分には検証されていないことから,まずマッサージの圧を数値化することが,フェイスマッサージを行う上で安全性の確保や看護への適用において重要であると考えた。そこで,適切なマッサージ圧の範囲の検討するプレテストに取り組んだ。 マッサージの圧を口頭で確認しながら,触れる程度の「弱」,心地よいと感じる「良」,やや強く感じる「強」まで力を増す行程を繰り返し,圧の範囲を求めた。前頭筋のマッサージでは弱~良は200~400 g/cm2で,500~700 g/cm2では強いと感じていた。眼輪筋のマッサージでは眼の下側の痛覚の閾値が高かった。頬部のマッサージでは200~400g/cm2が弱~良で,500 g/cm2代では強いと感じていた。押圧では頬部や耳周囲の経穴では200 g/cm2で弱と感じ500~600 g/cm2で良と感じていた。眼周囲では上側では700~800 g/cm2で良,下側では500~600 g/cm2が良で上側と差があった。口周囲では300~600g/cm2で良と感じていた。骨のある部分の押圧では高めの圧が必要であると考える。 同時に測定した心拍変動も解析した。前額部や頬部のマッサージでは,マッサージの圧に関わらずHFは平均191.81 msec2,LF/HF比は平均0.63で推移した。押圧では213.24msec2,LF/HF比は平均1.07で推移した。このことから,マッサージは副交感神経を活性化し,押圧は交感神経系を活性化させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,ストレスによる心身反応の理論的な検証と測定方法の決定と,フェイスマッサージの実験準備を充実することを目標に挙げた。本実験の前にフェイスマッサージの手技や生理的・心理的指標について文献検討を行った。フェイスマッサージの手技については,十分に説明されたものがないことが明らかになり,まずはマッサージ圧について,プレテストを行った。その結果,適切な圧について明らかになりつつある。また,マッサージと押圧の時の自律神経系の反応が異なる可能性が示唆され,本実験を行う上での重要な資料となる。生理的・心理的指標については,フェイスマッサージの研究が少なく,他のマッサージの研究も視野に入れ,新たな生理的指標についても検討した。 以上のように,平成24年度に目標に挙げていた内容について実験を進めており,おおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
マッサージ圧の範囲を確定した後,各マッサージ圧による生理的・心理的反応を測定する。実験の精度を上げるため,ストレス負荷の方法を決定したり,コントロール群を置いた実験を遂行していく。これにより,特にストレス反応の緩和に焦点を当てて分析をする。血液循環系においては血圧,脈拍,末梢温,自律神経系については心電図をとり,自律神経活性を解析する。内分泌系・免疫系,神経内分泌系の試料については,唾液による分析を行い,被験者の負担を軽減する。心理的指標については,緊張や不安等の気分,感情を測定するProfile of mood states(POMS),Visual Analog Scale(VAS)などの尺度以外に,うつのレベル,自尊感情を測定する。また心理的変化(主観的データ)を脳の生理的変化とすり合わせて観察することが結果の信頼性を高めると考えられ,フェイスマッサージによる生理的・心理的変化をより客観的に評価する方法を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
フェイスマッサージによる神経内分泌系の影響は,唾液による分析を行うためその検査費用や,心理的指標の質問紙の購入等が必要である。被験者に対して同じレベルのストレス負荷をかけるための装置が必要である。また,実験を進めるための補助者の雇用,マッサージ圧に関する研究の学会発表等の費用が必要である。
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