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2013 年度 実施状況報告書

抗がん剤投与に起因する皮膚傷害についての確かなエビデンスに基づく看護ケアの確立

研究課題

研究課題/領域番号 24593208
研究機関岩手県立大学

研究代表者

武田 利明  岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305248)

研究分担者 平野 昭彦  岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (30305255)
三浦 奈都子 (小山 奈都子)  岩手県立大学, 看護学部, 助教 (40347191)
及川 正広  岩手県立大学, 看護学部, 助教 (60537009)
キーワード抗がん剤漏れ / 看護技術 / 実証研究 / 病理学的研究
研究概要

今年度も実験動物を用いた研究と培養細胞を用いた研究を実施した。実験動物を用いた研究では、ビンカアルカロイド系の抗がん剤が漏れたときの罨法の有用性について検討した。我々はすでにオンコビン(ビンクリスチン硫酸塩)を用いて温罨法は不適切なケアとした結論を得ており臨床の看護師も理解しているが、臨床の場では院内マニュアルに温罨法を推奨している施設もあることから、オンコビン以外のロゼウス(ビノレルビン酒石酸塩)について検討した。その結果、温罨法は不適切なケアであることを再現できた。抗がん剤の血管外漏出においても初期の対応として冷罨法が推奨できることをより強く示すことが出来た。次に培養細胞を用いた研究では、起壊死性抗がん剤の皮膚細胞傷害メカニズムと温度変化による影響について検討した。この研究では、ヒト皮膚線維芽細胞であるSF-TY細胞を用いて、微小管機能阻害薬による皮膚傷害メカニズムと温度の影響について検討した。方法は、①ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセルの臨床用薬液とその10、100倍希釈溶液を12、24、48、72時間経時的に曝露し細胞生存率を測定した。②各抗がん剤の臨床用薬液とその2、10、20倍希釈溶液をそれぞれ23℃、37℃及び41℃で20時間曝露し細胞生存率を測定した。③各抗がん剤の臨床用薬液の10倍希釈溶液を24時間曝露した細胞を回収後、超音波破砕し細胞内マロンジアルデヒド(MDA)濃度、メタロチオネイン(MT)濃度、グルタチオン(GSH)濃度、及びカタラーゼ活性を測定した。その結果、各抗がん剤において、急性と遅発性の2相性の細胞毒性が認められ、37℃での曝露に比べて23℃での曝露における細胞生存率は高い傾向を示した。一方、41℃では、検体の低濃度曝露時に細胞生存率が高値を示した。いずれの抗がん剤の曝露においても、MDA濃度の増加と、それに伴ったMT濃度、GSH濃度及びカタラーゼ活性の増加が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

特に培養細胞を用いた研究で、起壊死性抗がん剤の血管外漏出時の組織傷害に対する処置法として冷罨法を用いることで、細胞傷害抑制効果を示す所見が得られており、動物実験での結果と一致する知見が得られた。また、検体の低濃度曝露に反映される細胞傷害性の軽い状態では、冷罨法又は温罨法どちらにおいても傷害抑制効果を示すことを示唆するデータが得られている。これは当初の計画では予測できなかった新たな知見であり、実験動物での検討が必要と考える。さらに、微小管機能阻害薬の急性の傷害は酸化的ストレスに起因していることが示唆され、その際に活性酸素種に対する生体防御因子であるMT、GSH及びカタラーゼが細胞傷害の抑制に関与する可能性を示唆するデータが得られておりメカニズムの解明にも一歩前進したと考える。

今後の研究の推進方策

これまでの一連の研究で、抗がん剤が漏れた場合においても早期の冷罨法が皮膚傷害の程度を軽減させる作用があることが示されている。さらに、ケアの質を高めるために冷罨法の至適温度を基礎研究により明らかにする必要がある。このための新たな動物モデルとしてマウスの尾の血管周囲への実験的な漏れを作製することを検討している。

次年度の研究費の使用計画

動物飼育室の保守点検の費用が不要になったことと実験補助の人件費が削減できたことにより次年度使用額は発生した。
主に培養細胞の実験で使用する試薬等の購入費として計画的に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 現場力を高めるための研究者との連携~実践知を科学知にするために~2014

    • 著者名/発表者名
      武田利明
    • 雑誌名

      日本腎不全看護学会誌

      巻: 16 ページ: 9-13

  • [学会発表] 起壊死性抗がん剤漏出の皮膚傷害メカニズムと温度変化による影響2014

    • 著者名/発表者名
      箱守愛・佐川匠・佐藤沙織・武田利明・高石雅樹・浅野哲
    • 学会等名
      日本薬学会弟134年会
    • 発表場所
      熊本市
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] ビンカアルカロイド系抗がん剤の血管外漏出に対する罨法の作用2013

    • 著者名/発表者名
      及川正広・武田利明
    • 学会等名
      第33回日本看護科学学会学術集会
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      20131206-20131207
  • [学会発表] 現場力を高めるための研究者との連携~実践知を科学知にするために~2013

    • 著者名/発表者名
      武田利明
    • 学会等名
      第16回日本腎不全看護学会学術集会
    • 発表場所
      横浜市
    • 年月日
      20131116-20131117
    • 招待講演
  • [学会発表] 抗がん剤血管漏出に対する非侵襲的観察法に関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      及川正広・三浦奈都子・武田利明
    • 学会等名
      第1回看護理工学会学術集会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      20131005-20131005
  • [学会発表] 抗がん剤の血管外漏出に対する罨法の作用2013

    • 著者名/発表者名
      及川正広・武田利明
    • 学会等名
      コ・メディカル形態機能学会弟12回学術集会
    • 発表場所
      広島県呉市
    • 年月日
      20130914-20130914
  • [備考] エビデンスベース看護情報センター

    • URL

      http://ebn.nurs.iwate-pu.ac.jp

URL: 

公開日: 2015-05-28   更新日: 2015-06-16  

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