看護師の組織的な研究成果活用を推進するため、すでに指摘されている研究成果活用の阻害要因以外の要因について看護スタッフを対象に因子探索を行った結果、新たな阻害要因が抽出された。すなわち(1)日本看護協会等が認定する専門看護師や認定看護師が所属していない、(2)ケアの改善を望んでいても他の看護師への遠慮や気軽に相談できない雰囲気がある、(3)組織的にケア改善に取り組む仕組みがない、(4)看護の基本姿勢やアカデミックスキルが身についていないであった。それを受け、東北地方の病院の看護管理者を対象に研究成果活用の阻害要因と組織構成員であるスタッフの学習歴、院内教育との関連について検証を行った。結果、病院の規模にかかわらず看護スタッフに占める看護大学卒業者の割合が高くなるにつれて有意に「組織環境」の関する阻害要因が軽減することが確認された。また、院内教育では阻害要因の強さを示す得点が最も高かった研究成果の入手プロセスに関連する「コミュニケーション」と、研究能力向上を目的とした研修の実施とに有意な相関関連が認められた。さらに、阻害要因が2番目に高かった「研究の質」は、会議の活性化とまとめる能力の向上を目的とした研修とに有意な相関関連が認められた。 以上から、組織的な研究成果活用の推進には、看護や研究の基礎を修得し、さらに高い研究成果の活用能力を有する看護スタッフの育成と活用、スタッフ個人に依存したり職場の雰囲気に左右されないケア改善のシステムの整備を行うことが重要である。そのためには大卒看護師の採用の推進、文献検索と研究成果の入手への手続き的、経済的支援、ならびに、ファシリテーションやコーチング等コミュニケーションスキルの向上と合意形成の促進を図る院内研修の充実が鍵となってくることが明らかになった。
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