研究課題/領域番号 |
24593211
|
研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
阿部 幹佳 宮城大学, 看護学部, 講師 (30325930)
|
研究分担者 |
澤口 利絵 宮城大学, 看護学部, 助教 (90457755)
佐々木 久美子 宮城大学, 看護学部, 教授 (80310150)
|
キーワード | 災害 / メンタルヘルス / 市町村職員 / 看護相談 / ネットワーク |
研究概要 |
1.被災自治体A市での看護相談にあたり地元支援資源を活用すべく,25年度6月よりA市本庁舎での相談を心のケアセンター(以下コケセン)の担当とした.コケセン担当者は,精神保健福祉士と臨床心理士であった.研究代表者らはA市の希望を受けて出先機関で看護相談を実施した.開催回数は本庁舎12回(うち2回は代表者が担当),出先機関7回であった.代表者らの担当分の実績は利用実数18名(男性12名,女性6名)であった.20代3名,30代9名,40代2名,50代4名であった.支援内容(延べ)は健康相談(身体)13件,健康相談(精神)5件,計測2件,情報提供2件であった. 2.平時からのA市のメンタルヘルス(以下MH)対策の再構築として,安全衛生委員会の再開についてA市担当者と2度打ち合わせ会議で検討したが,委員の選定にとどまり会議の実施までには至らなかった.A市担当者は行政職員であり,MH支援と他業務とを兼業をしている,さらに担当者の所属部署で体調不調者が発生し,担当者の業務量が増加したなどA市側担当者の業務量増加がその理由であった. 3.24年度同様支援者会議を開催しA市職員支援の課題を共有しながら看護相談を実施した.今後のMH対策の検討のため産業保健師からのスーパーバイズを受けた. 4.A市職員の健康調査は24年度に引き続き東北大学大学院医学系研究科予防精神医学寄付講座が担当した.引き続きその結果を共有し看護相談に生かした. 5.災害支援やPTSDに関する国内学会に参加し,本研究について看護実践家や医師等と意見交換を行った. その他として,26年度から看護相談の実施を検討するために,被災自治体B町の福利厚生担当者との打ち合わせ会議を開催した.B町ではすでに職員健康相談を心のケアセンターが担っているため,代表者らは26年度からB町職員のMH対策を検討する支援者として参画することとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画についてはほぼ計画通り実施できた. 健康相談は支援者ネットワーク(以下NW)を生かし,地元支援資源であるコケセンに協力を得ることにより,A市健康相談利用者は自身のニーズに応じ,コケセンに出向く,もしくは電話等で継続的なフォローを受けることができている. 災害後の支援は,24年度と同様に各支援組織の得意とする支援を組み合わせながら,A市職員支援を実践できている.また,新たに共同研究者となった保健師である佐々木久美子教授の紹介により産業保健師との新たなNWを形成,また地方公務員災害補償基金の東日本大震災関連公務災害防止事業メンタルヘルス総合対策事業での講師との新たなつながりにより,MH支援体制づくりやMH支援について支援体制をさらに強化することができた. 24年度の実施で明らかになった課題への取り組みについては,A市担当者の災害後の業務量増加などのため推進することが困難であった.A市担当者は行政職員であるために,職員のMH支援が重要であると理解していても,他の業務量との兼ね合いなどからMH支援体制の再構築だけに取り組むことが困難であることなどから,外部支援を推進していくには限界があると考えられた.ただ,支援が途絶えると職員のMH支援はさらに滞ってしまうだろう. A市への介入の評価としては,職員の健康調査は東北大学が実施したため概要のみであるが,PHQ-9の中等度以上の職員が平成24年度は21.4%であったのが,平成25年度は22.6%と微増しており,依然として職員の精神的ストレスが高いためか抑うつ的な者の割合が多い.A市の25年度中の休職者には24年度同様に,震災関連の者がいないということである. 職員の業務内容はまだまだ膨大であることが予測されており,職員のMH支援を継続していくこと,支援内容についてもより強化していくことが必要であると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
1.引き続きA市での看護相談を継続する.自治体本庁舎の健康相談はコケセンに担当を引き継ぎ,研究代表者は出先機関での看護相談を担当する.コケセン,A市と健康相談の情報を共有しながら,27年度以降の実施について検討をしていく. 2.MH支援の内容として担当者と検討しながら,健康面に焦点を当てた支援等も取り入れていく. 3.25年度に進められなかった平時のMH対策の再構築を行う.A市担当者との協同を基本とし,25年度中に安全衛生委員会の開催,安全衛生委員会へのオブザーバーとしての出席について実現できるよう努力を重ねる.これらが順調に進めるることができた場合,労使でのMH対策の検討,「心の健康づくり計画」の策定の支援,災害後A市職員のMH支援マニュアル策定の準備と順次進めていく. 4.被災自治体B町職員のMH対策を検討する支援者として参画し,A市との支援体制の違いなどから,大規模災害後の自治体職員MH支援体制のあり方について検討をする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
A市の本庁舎での健康相談を心のケアセンターの担当としたため,旅費使用額が想定よりも減額となった. 研究代表者は26年度より所属機関が変更となる.所属機関の研究費使用ルールにより,25年度所属機関で認められていた自家用車での出張が認められなくなる.新所属機関では,被災自治体までの交通手段は,新幹線とレンタカー利用となるため旅費の大幅な増額が見込まれる.よって次年度使用額は旅費として使用する予定である.
|