研究課題/領域番号 |
24593211
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 幹佳 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教育研究支援者 (30325930)
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研究分担者 |
澤口 利絵 宮城大学, 看護学部, 助教 (90457755) [辞退]
佐々木 久美子 宮城大学, 看護学部, 教授 (80310150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 災害 / メンタルヘルス / 市町村職員 / 看護相談 / ネットワーク / 産業保健 / 安全衛生委員会 |
研究実績の概要 |
1.被災自治体B町ではすでに健康相談を心のケアセンター(以下コケセン)が実施していたため、研究代表者らはB町での健康相談結果を共有した。B町での看護相談活動は実施していないため、26年度研究実施計画5.で予定していた関連学会への報告は行わなかった。 2.すでに被災自治体A市で行っているメンタルヘルス支援ネットワークに準じたメンバー(管轄保健所、自治体担当者、コケセン、研究代表者所属機関)で3回, B町メンタルヘルス支援者開始した。そこで職員に対するメンタルヘルス支援体制について検討し、B町のニーズに応じながらA市での支援に準じたメンタルヘルス支援を各支援機関が実施した。研究代表者は、支援会議の中で自治体内でのメンタルヘルス支援体制づくりに関する助言を行った。 3.被災自治体A市での看護相談を、A市の要望をもとにコケセンと協働して行った。25年度に引き続き研究代表者らは出先機関を担当した。研究代表者らが担当した実績は開催回数は6回、利用実数4名(男性4名)、20代1名、40代3名であった。支援内容(延べ)は健康相談(身体)4件、健康相談(精神)1件、その他の相談1件であった。健康相談では、相談者が自身の状態に気付けるようにマインドフルネスの知見を活かした。 4.A市とB町職員の健康調査は研究代表者の現所属組織が担当した。A市での心身の健康状態の縦断変化では、順調に良好な結果に推移していることを確認できた。一方、B町は被災規模がA市よりも大きかったため、A市に比べ心身の健康状態が悪かった。A市に関しては、看護相談の開催規模を縮小できることを確認できた。 5.24年度から看護相談を実施していたA市では、研究代表者の継続的な促しにより安全衛生委員会が再開された。その中でこれまでの看護相談の結果を報告する機会を得、労使でのメンタルヘルス対策の検討、「心の健康づくり計画策定」の重要性について市幹部や出席委員に説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画についてはほぼ計画通り実施できた。 健康相談は25年度と同様にコケセンに協力を得、実施できた。またコケセンはB町での健康相談も担っており、研究代表者らがA市で実施してきた看護相談を引き継ぐことが出来る最適な支援組織であると考えている。 平成25年度に実施が難しかったA市での安全衛生委員会が再開し、その中で看護相談について共同研究者の佐々木教授とともに報告する機会を得、職員と組織が協同しメンタルヘルス対策を検討していく必要性を訴えることが出来た。その後も安全衛生委員会は継続的に開催されており、衛生管理者である保健師を中心に職員自身により職員のメンタルヘルス対策の検討がされている。 A市への介入の評価として、東北大学が実施した健康調査結果では、PHQ-9の中等度以上の職員の割合は、24年度21.4%、25年度22.6%、26年度14.4%とこの1年間で大幅に軽快しており、抑うつ的な職員の割合が低下している。A市によると、26年度中の休職者にはメンタルヘルス不調の者はいるが、発災後の経過とともに、震災関連の影響によるものかどうかという判断が難しくなっているとのことである。しかしながら、休職者が復職後に再度休職をする、40歳代の中堅職員の休職が見られるが、復職支援が出来ていないことを確認している。 また、27年度に開催予定であった支援者支援を行う者を対象としたシンポジウムに招聘され、自治体職員への看護相談活動とその後の組織内メンタルヘルス支援体制づくりの必要性について、研究者、支援者支援を行う者や一般市民に向け講演する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
1.A市での看護相談はコケセンに引継ぐ。B町ではコケセンが担っている健康相談に追加し看護相談が必要な場合に看護相談を実施する。 2.26年度で明らかになったA市でのメンタルヘルス不調者の復職支援に、共同研究者や各支援組織と共同し実施していく。その際、A自治体では職員のメンタルヘルス支援を実施する者が健康管理スタッフではなく行政職員であることを考慮し、行政職員が出来る支援をニーズに応じ組み立てていく。 3.B町では必要に応じメンタルヘルス体制づくりへの助言を実施していく。 4.本研究の最終年度であるため、研究代表者らが実施してきた支援を地元支援資源につなぎ、本研究終了後も職員のメンタルヘルス支援が滞らないように研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関が26年度から変更となったことにより、所属機関の研究費使用ルールが変更となり、特に「人件費・謝金」での使用予定が0円となった。加えて、A自治体での看護相談のニーズの減少に伴い「旅費」の使用予定が減額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度から取り組む予定であるA市でのメンタルヘルス不調者の復職支援に関わる、またB町での職員メンタルヘルス支援体制づくりへの助言を行う予定のため、主に旅費として使用する予定である。
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