本年度は研究期間を延長した最終年度として、サーモグラフィーを用いた温罨法の実験を行う必要があった。実施理由としては、これまでの実験では有線の皮膚温計を使用し、被験者の5-7部位の皮膚温を測定していたが、装着に要する時間的負担、装着中の身体的な拘束感があり、今後、患者に適応していくためにより簡便な測定方法を検証する必要があった。サーモグラフィーの機器自体は高価であり、購入が叶わなかったため、リースで費用を拠出した。その結果、有線の皮膚温計と同様のデータを得ることができ、被服を着用しない四肢末梢の皮膚温が正確に得られることがわかり、今後、臨床患者での適用にも有用であることがわかった。しかし、被服で覆われる上腕、大腿部の皮膚温の測定が必要な場合は、今後も有線の皮膚温計での測定をしていくことが求められる。 このほかラットを用いて、僧帽筋へ逆行性標識物質の注入を行い、脊髄神経節の凍結切片を作成し、免疫組織学的手法を用いて染色を行った結果について解析した。その結果、標識された頸部、胸部脊髄神経節の小型細ニューロンにTRPV4が含まれることがわかった。TRPV4が含まれる小型ニューロンにはCGRPと共存するものが多く観察された。また、僧帽筋の血管周囲の神経線維にもTRPV4が発現しており、CGRPと共存していた。僧帽筋に投射する脊髄神経節細胞に含まれるCGRPはTRPV4のみならず、TRPV1やTRPV2との共存もあることから僧帽筋の血流、血管の拡張に関与していることが考えられる。
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