東日本大震災では、災害支援のイメージとして、救護や救急搬送トリアージを思い浮かべる者が多く、慢性疾患に対応することに戸惑いがみられたことが課題として指摘されていた。そこで本研究では、慢性疾患に対応することを目的として、避難所において被災者の心情を理解した上で、被災者から必要な情報を聞きとるような場面を体験できる新しい教育・研修方法を開発している。 前年度にこの教材の教育効果を評価したところ、全般的に「おおむね良好」といった評価が得られた。しかしながら、「避難所における被災者への対応について自信がついた」という項目については、比較的良好ではないことが明らかとなり、これが新たな課題として浮上した。そこで、平成26年度は、教育方法のブラッシュアップを図ることを優先的に実施し、シナリオや教材の見直しを行った。 まず、被災者へのかかわり方の事例として、良い見本、悪い見本を検討・作成し、どのようにかかわると、相手がどのような反応を示すのかを、受講者が具体的にイメージできるようにした。また、事前学習用の資料を作成し、あらかじめ受講者自身で準備できる環境を用意した。これによって、何も準備しないで被災者役と接する場合と比べ、事前学習によって受講時にある程度の知識が備わっていることが期待されるため、どのようにかかわったら良いのか迷う事なく実践できるようになり、ためらいや、困難さが軽減でき、自信がつくことに結びつくのではないかと思われる。 今後、本教材が普及し、この体験学習を通じて幾つかの事例を学ぶ機会が増加すれば、多様な被災者に対してどのように接したら良いのかを繰り返し試行錯誤することができ、新たな学びに結びつくのではないかと考えている。
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