研究課題/領域番号 |
24593234
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
高林 範子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (30551816)
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キーワード | 看護コミュニケーション教育 / バーチャルコミュニケーション / アバタ |
研究概要 |
本研究の目的は,身体的バーチャルコミュニケーションシステムを応用し,患者と看護学生のVirtual Actor(VA)を組み入れた仮想病室の構築とその仮想病室でのVAを介したロールプレイングを実施し,コミュニケーション教育支援システムの活用可能性を検証することである. 第1段階として,仮想病室および患者と看護学生のVAを構築し,身体的バーチャルコミュニケーションシステムに実装させた.患者と看護学生のVAは,平成24年度の女性版に加え男性版を作成しキャラクタ選択のバリエーションを増やした.また,昨年のVAの表情や視線などの表現性の課題に対しては,既存の眼球動作モデルを導入しシステムの改良に取り組んだ. 第2段階として,改良したシステムを使用し,仮想病室での患者と看護学生のVAを介した模擬患者と看護学生のロールプイングを実施し,セッション終了後にアンケート調査を行った.被験者は,A県SP研究会の模擬患者6名とA大学看護学科2年生6名であった.年齢層の異なる2つのシナリオに基づき,セッションを2回ずつ実施した.アンケート項目は6項目で構成され,対面でのロールプレイングを基準に7段階のリッカート方式で評定した.自由記述欄にセッション中の気づきを全て記入させた. 看護学生の結果は,昨年とほぼ同様であったが,模擬患者の結果は,どちらのシナリオにおいても「役のなりきり」「役の気持ちになる」「聴いてもらえた」「緊張した」で肯定的に評価されたが,「対話し易さ」「システムを使用したい」の回答は中立付近となった.自由記述では「患者役の年齢差があるときは役に入りやすい」「沈黙の空気を感じる」という肯定的な意見もあり,システムの活用可能性が示された.しかし,「装着が不自由で,それと比例し心の動き幅が制限される気がした」といった意見もあり,今後もシステムの改良に取り組むと同時に,実用化に向けた検討を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つである身体的バーチャルコミュニケーションシステムを応用した患者と看護学生のVirtual Actor(VA)を組み入れた仮想病室の構築は,そのベースは完成し,本年度予定していた男性版のVAの製作も進み,キャラクタ選択のバリエーションを増やすことができた.表情や視線の表現性の課題に対しては,眼球動作モデル(眼球遅延動作モデル・視線はずしモデル)を導入しシステムの改良を進めた. 二つ目の目的である開発システムについての活用可能性の検証については,学生の評価に加え,本年度は,患者役の専門家である模擬患者にシステム評価実験に参加してもらい,システムの評価をさせた.その結果,「役のなりきり」「役の気持ちになる」「聴いてもらえた」「緊張した」で肯定的に評価されたが,「対話し易さ」「システムを使用したい」の回答は中立付近となった.自由記述では「患者役の年齢差があるときは役に入りやすい」「沈黙の空気を感じる」という肯定的な意見もあり,システムの活用可能性が示された. 平成24年度に開発したシステム(初版)の研究成果は,日本人間工学会誌に原著で掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策2事項を以下に示す. 1.開発システムの改良については,表情や視線の表現性の課題に対して,既存の眼球動作モデルと今回新たに開発した微笑みモデルを導入し,システムの改良に取り組む.活用可能性の検証については,学生からは肯定的な評価が得られ,このシステムは患者体験が行え,役になりきることが可能なシステムであることが確認できたが,患者役の専門家である模擬患者からは「対話し易さ」「システムを使用したい」の回答は中立付近となった.自由記述では「患者役の年齢差が有るときは役に入りやすい」「沈黙の空気を感ずる」などシステムの活用可能性に関する意見もあったが,「装着が不自由で,それと比例して心の動き幅が制限された気がした」といった意見もあり,今後もシステムの改良を進めると同時に,改良したシステムを使用した評価実験を行う.さらに,開発システムの実用化に向けた検討を進める. 2.研究成果の発表については,平成25年度の研究成果の一部をヒューマンインタフェースシンポジュウム2014(京都),第34回日本看護科学学会学術集会(愛知)あるいは日本人間工学会看護人間工学部会等で発表する.また,開発システム(改良版)を使用した評価実験の結果を,日本人間工学会誌などへの論文投稿を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の掲載料・別刷り代金の支払いおよびデータ分析用ソフト(心拍変動分析ソフト)用パソコンの購入が次年度にずれ込んだため 1.開発システム(改良版)の活用可能性の検証のため,模擬患者・学生被験者および実験補助員の謝金に使用する.また,データ分析ソフト(心拍変動分析ソフト)用パソコン購入のために使用する. 2.平成25年度の研究成果発表及び研究に関する情報収集の為の学会参加費及び旅費に使用する.また,論文掲載料・別刷り代金費用のために使用する.
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