研究課題/領域番号 |
24593234
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
高林 範子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (30551816)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 看護コミュニケーション教育 / 身体的インタラクション / バーチャルコミュニケーション / アバタ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,身体的バーチャルコミュニケーションシステムを応用し,患者と看護実習生のVirtual Actor(VA)を組み入れた仮想病室の構築とその仮想病室でのVAを介したロールプレイングを実施し,コミュニケーション教育支援システムの活用可能性を検証することである. 平成26年度は,開発した看護実習生-患者役アバタを介した看護コミュニケーション教育支援システムの課題であったVAの表情や視線などの表現性に対し,微笑みと眼球動作モデルを付加したシステムの改良に取り組んだ.改良システムを用いたコミュニケーション実験を行い,このシステムの有効性を検証した.被験者は,A大学看護学科2・3年生,研究協力の同意が得られた友人関係にある14組28名であり,「A:真顔」,「B:微笑み+眼球動作無し」,「C:微笑み+眼球動作有り」の3つのモードを用意し,一対比較,官能評価および自由記述をさせた.その結果,一対比較では,看護実習生役と患者役共にCモードが最も高く評価された.また,患者役の官能評価においてもCモードが「対話しやすさ」,「安心感」,「生命感」,「今後このシステムを使用したいか」の項目で有意に高く評価された.さらに自由記述においても「看護学生がこちらを向いて傾聴してくれているように感じた」「表情の変化があり雰囲気がやわらかい」という肯定的な意見もあり,Cモードを付加したシステムの活用可能性が示された. しかし,看護学生役の官能評価では,CモードはBモードと同等か低く評価され,自由記述においても「患者の目が上目遣いで,私のことを警戒しているように感じた」などの意見から,今回アバタに付加した眼球動作モデルと実際の患者の視線動作との間に隔たりがあると考えられ,眼球動作モデルの調整の必要性が認められた.今後さらにシステムの改良に取り組むとともに,実用化に向けた検討を進める.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つである身体的バーチャルコミュニケーションシステムを応用した患者と看護学生のVirtual Actor(VA)を組み入れた仮想病室の構築は,そのプロトタイプを完成させた.表情や視線の表現性に対する課題に対しては,眼球動作モデル(眼球遅延動作モデル・視線はずしモデル)と微笑みモデルを導入し,システムの改良を進めた. 二つ目の目的である開発システムについての活用可能性の検証については,改良システムを用いたコミュニケーション実験を行いシステムの評価を行った.その結果,両モデルを付加したモードが最も高く評価され,システムの活用可能性が示された. 今回の研究成果は、日本人間工学会誌に論文投稿中である. 平成24年度に開発したシステム(初版)の研究成果は,平成26年4月に日本人間工学会誌に原著で掲載された.
|
今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 本研究課題の今後の推進方策2事項を以下に示す. 1.開発システムの改良については,患者役アバタの表情や視線の表現性の課題に対して,患者役の眼球動作の実測などを行い,既存の眼球動作モデルの調整を行うなどシステムの改良に取り組むと同時に,開発システムの実用化に向けた検討を進める. 2.研究成果の発表については,日本人間工学会誌へ論文投稿中であるため、査読結果を待ち,論文内容の充実を図る.
|
次年度使用額が生じた理由 |
開発したシステムの表現性に関する一部改良が必要となり,再度システムに関する評価実験を行った.その研究成果を日本人間工学会誌へ論文投稿をする予定である.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の研究成果発表及び研究に関する情報収集のための学会参加費および旅費に使用する.また,論文掲載料・別刷り代金費用として使用する.
|