研究課題/領域番号 |
24593235
|
研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
日高 陵好 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (90348095)
|
研究分担者 |
矢野 美紀 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (80347624)
伊藤 良子 県立広島大学, 保健福祉学部, 助手 (70594430)
|
キーワード | 災害看護 / 周産期 / リスクマネジメント / マニュアル |
研究概要 |
平成25年度は、東日本大震災の被災地で震災当時妊婦・産婦・褥婦であった方への調査が目的であった。対象者の方をリクルートするために、被災地に赴き、自治体の保育園管轄の部署に研究調査の承諾を得た後に、保育園に依頼書を郵送して、対象者を募った。最終的に19名の方から研究協力の同意を得ることができた。2回にわけて被災地に赴き面接調査を行った。さらに今年度、身近な地域の産科病棟における実際の災害対策についてのアンケート調査も行った。 今回の調査から妊産褥婦への支援が不足していたことが明らかとなった。対象者たちはそれぞれの状況に応じてに必死に震災を切り抜けていた。子どもの命を守ることが大きな原動力となり困難に耐えている姿や、迷惑をかけたくないために妊婦だとわからないようにする姿等、被災時の実際の様子がみえてきた。要支援者としての妊産褥婦、母子をどう守っていくかはまだまだ支援の余地が多くあることがわかった。産科にたずさわる医療者としてできることが明確になったことを今後発信していく予定である。これまでの調査の一部を国際学会で発表した。【To strengthen disaster risk management at maternity wards.(WANS, Seoul, Korea)平成25年10月】 産科病棟への災害対策アンケートでは診療所での対策が不十分であること、病院でも産科に特化したマニュアルがないこと、地域や他機関との連携がこれからであることが明確となった。調査した地域は被災地より遠方にあり、これまでも大きな災害が少なく、災害に対する意識が薄いという背景があり、今後の対策への強化が望まれる。この結果の一部については日本母性衛生学会で発表した。【災害時に対する周産期での備え、平成25年10月大宮】
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は、周産期における災害時対応のためのリスクマネジメントを強化するためであり、最終的にはモデルマニュアルを作成することが目的である。平成24年度は被災した医療施設を訪問し、周産期に関連する医療者に面接調査を行った。産科に関わる管理者とスタッフが対象者であった。平成25年度は東日本大震災当時、妊産褥婦であった方を面接調査し、医療や支援を受ける側の視点を加えた。最終的に19名の対象者に面接を実施することができ、前年度とは違った新たな視点が加わった。予定していた事項を遂行することができたため、おおむね順調に研究が進んでいると判断した。今後成果を発信していくことが必要であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
フィールドワークはこれで終了し、平成26年度は、先の阪神淡路大震災や中越地震等の時からの知見を文献によりレビューすることと、こうした震災での事情に詳しい関係者に面接を行うことでさらに情報収集を行う。こうした情報と私たちのこれまでの調査により得られた知見を包括させて周産期のリスクマネジメントを強化するためのモデルマニュアルを作成する。今年度は学会発表はもちろんのこと、論文化して結果を発信したいと考えている。こうした内容は当初の計画通りである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に25年度の予算から10万円を前倒していたため、平成25年度は当初計画(70万円)より-10万円の60万円のスタートであった。平成25年度は当初の予定より旅費、消耗品(切手や図書カード)に予算がかかると見込まれたため、平成26年度分から念のため30万円を前倒しした。多く見積もって前倒したため残額が生じた。これはもともと平成26年度分であった。 平成26年度の予算使用計画予定:過去の震災からの知見に詳しい関係者への聞き取り調査や学会発表に関わる旅費、謝金としての図書カード、報告書作成や分析等にかかる消耗品(インク、印刷費用)の購入。
|