研究課題/領域番号 |
24593236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川県立保健医療大学 |
研究代表者 |
松村 千鶴 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 講師 (50331864)
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研究分担者 |
深井 喜代子 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (70104809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不織布 / 綿タオル / 清拭効果の比較 |
研究概要 |
本研究の目的は、我が国の看護実践の場でよく使われている綿タオルと使い捨ての不織布の清拭効果を比較することである.同意の得られた健康男性15名(平均年齢20.45±0.82歳)を対象に、異なる日に、タオルの種類だけを変え、同じ方法で全身清拭を実施した.評価指標には皮膚温、深部温、血圧、心電図(心拍変動)のほかに、気分を知るためにPOMS短縮版を、覚醒度とリラックス度の2種類のVisual Analogue Scaleを用いた.さらに、タオル素材の肌触りについても下位項目にリッカートスケールを設けて調べた.実験は安全に留意して実施し、個人情報保護に努めた。 その結果、主観的評価では、両素材間に顕著な差は認められなかった。ただ、統計学的見地から言及すれば、綿タオルは不織布に比べPOMSの「緊張‐不安」と「疲労」の評点が有意に減少したことから、心地よさがわずかに優れていたと評価できよう。 両素材の清拭効果を生理反応で見ると顕著な差はなかったが、綿タオルは不織布に比べ清拭終了30分後まで副交感神経活性(HF)の高値が認められたことから、若干ながら主観的評価を支持する結果であったといえよう。 以上の結果から、両素材の違いが及ぼす清拭効果は、多次元的な視点から総合的に評価すると、全身清拭では、わずかではあるが綿タオルのほうが不織布に比べ、心地よさに優れていることが明らかになった。さらに、汎用されている不織布は生理的・主観的にも綿タオルとほぼ同等な素材であることが実証された。今後、感染予防とコスト面の観点からも、不織布の素材としての利点(拭き方及び形状・保温性・厚さ・大きさなどの素材の仕様を含む)をエビデンスと伴に、安全で快適な清拭技術の開発を目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は不織布による清拭効果を確実に測定するために、予備実験を行った。その方法として、健康な男性を対象に従来使用されている綿タオルと、10種類中最も高評価であった不織布による清拭効果を生理的、主観的に検討した。その研究成果は、平成25年の日本看護研究学会で発表後、論文投稿する予定である。 本来の研究計画では、平成24年度中に予備実験を実施した後、臨床試験までの遂行予定であった。しかし、平成24年8月の予備実験において、研究方法に誤りがあったことから、平成25年3月に再度実施し直したため、臨床試験の実施を平成25年夏季頃に延期することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度からは以下の1)、2)、3)を遂行するとともに、4)の課題に取り組む。また、研究成果は年1~2回の発表とともに、国内外の学術誌に論文を投稿する。 1)臨床試験:安静臥床を強いられる重症患者、術後患者など全面的に全身清拭が必要な患者に対して、不織布による全身清拭を実施する。その際、患者の血圧や脈拍、呼吸状態など苦痛や疼痛の有無を十分確認し、病状が安定し安全を保障した上で実施する。なお病状の急変や緊急事態が発生した場合は、即座に中止し主治医に連絡する。 2)不織布による清拭を実施する看護師の評価、清拭時間、コストの検討:1)とは別に、不織布による清拭を実施した看護師に、拭いた感触(タオルの厚さ、温かさの持続、皮膚の汚れの落ち具合い、皮膚の保湿状況、看護師が感じた患者の満足度)を5段階で評価してもらう。患者1名における清拭の所要時間、清拭を実施する際の看護料、不織布の材料費を検討する。 3)より効果的な清拭素材の探究:不織布による心身への清拭効果をもたらさないのであれば、素材の枚数、保温方法、清拭方法等の要素の何が重要なのかを検討する必要がある。不安定な病状、室内環境条件(温度、湿度、騒音、照度)など条件を揃える検討が必要である。 4)清潔ケアの実践への適用方法の確立:平成26年度は、1)2)と並行して3)4)を継続して実施する。それらの結果から、新しい素材である不織布を臨床で活用するためのガイドラインを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(金額単位:千円) 設備備品費:パーソナルコンピューター(FUJITSU/Windows 8)300 国内旅費:研究打合せ旅費(岡山-高松往復20回/年)10、成果発表100、外国旅費:成果発表400、人件費および謝金:研究補助者雇用料(内訳: 6時間×30日×0.8千円)150、被験者謝金(内訳: 2時間×1日0.8千円×20人)40、外国語論文の校閲:300
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